「終戦とはごまかしだ」 敗戦を認めて修正を求めた首相

有料記事

[PR]

日曜に想う 曽我豪編集委員

 76年前の今日は終戦、いや、敗戦の日である。その事実をただちにごまかさず国民へ訴えようとした首相がいた。

 1945(昭和20)年8月17日、太平洋戦争を終結させた鈴木貫太郎首相の後を襲って陸軍大将で皇族の東久邇宮稔彦王(ひがしくにのみやなるひこおう)が首相に就任、初閣議を開く。

 防音装置があるのに、騒音で話し声も聞き取れない。陸海軍の飛行機だ。宮城を一周した後、首相官邸の屋根すれすれに飛び、次々と品川沖で自爆してゆく。

 初閣議では、国民に向け「今後に対処する覚悟」と題した声明を出すことが決まる。元朝日新聞副社長で今の官房長官にあたる内閣書記官長に就いた緒方竹虎氏が自ら原文を起草したが、そこに「終戦」の言葉があった。

 「終戦とはごまかしのことばだ」と断じたのが首相である。「いたずらに国民の覚悟を弛緩(しかん)せしめるだけだ。これは敗戦の事実を認めてよろしく“敗戦”とすべきだ」と言葉の修正を求めた。

 軍部の反発を恐れた下村定(…

この記事は有料記事です。残り1211文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません