「交ぜ書き」が嫌われる理由 格闘するメディア人たち
新聞、テレビで見ない日はない「まん延防止等重点措置」や「医療ひっ迫」。これらの言葉には、漢字と平仮名が交じっています。「蔓」(まん)や「逼」(ひっ)は常用漢字でないためですが、この交ぜ書きに不自然さを感じる人は多いようです。産経新聞の元校閲部長で、日本新聞協会の新聞用語懇談会委員を約20年務めた時田昌さんに、メディアと交ぜ書きとの格闘の歴史について聞きました。(聞き手・稲垣直人)
――産経新聞はマスコミでは珍しく、「まん延」と交ぜ書きではなく、「蔓延(まんえん)防止等重点措置」と、読み仮名(ルビ)付きで漢字表記しています。なぜですか。
「公文書の問題でよく使われる『改竄』(かいざん)などもそうですね。漢字で書く熟語は全て、漢字で表すのが自然と考えるためです。2001年末からこうしています」
漢字だから見えてくる「双璧」の意味
――「蔓」は元々、ツルや草が伸び広がるのを表します。アルファベットのような表音文字と異なり、漢字は視覚的に意味を伝えることができる、とも言われます。
「『双璧』なども、そうですね。2010年の常用漢字の改定で、『璧』は常用漢字になりましたが、産経ではその前に交ぜ書きをやめ、漢字ルビ付きにしていました。これは『双壁』と誤って書かれやすいですが、『壁のようにそびえている』わけではなく、『すぐれている』という意味の『玉』を含む『璧』が正しい。このように、表意性のある漢字は意味を正しく伝えやすい利点があるように思います」
――なるほど。
「ただ、いまの日本は教育格差が広がっているともいわれますから、使える漢字をさらに増やすなら、多くの人に知られている字かどうかを吟味する必要があるでしょう」
――そもそもメディアは、どのような事情で交ぜ書きをしたり、交ぜ書きをやめたりしてきたのでしょうか。
記事後半では、交ぜ書きが読みにくいわけ、各新聞社やメディアの事情、常用漢字のあり方について語っています。
「新聞・通信社、放送局が加…