丹波市氷上町成松に「ヱビスシネマ。」開館

前田智
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 兵庫県丹波市氷上町成松地区に、半世紀ぶりに映画館が戻ってきた。連合自治会が暴力団追放運動で買い取った建物を、西宮市の映画監督近兼拓史さん(59)が購入し、映画館「ヱビスシネマ。」に生まれ変わらせた。近兼さんは、この映画館を巡る映画「銀幕の詩」を制作中。「成松を映画の街にしたい」と意気込んでいる。

 近兼さんは映画「恐竜の詩」の撮影で丹波市を訪れ、自然や風土にひかれた。その時に「昔は丹波市にも映画館があった」と聞き、映画の楽しさを、丹波市の人に知ってほしいと思っていた。

 かつて河川交通の要衝として栄えた成松地区。次第に寂れ、映画館も姿を消していった。連合自治会が2014年に買い取った元暴力団事務所の建物があると知り、「地域がもてあましている建物が喜んでもらえる場になり、町おこしにもなる」と映画館にすることを決意。コロナ禍の影響もあって予定より遅れたが7月末、開館にこぎつけた。

 50ある座席の生地には、同市で織られる「丹波布」を使っている。音響にも力を入れ、スクリーン裏や壁などにスピーカー13台を設置した。「映画の魅力の半分は音。ぜひ本物を味わってほしい。丹波布の座席は全国から訪れる人にも貴重な体験になるのでは」と近兼さんは話す。

 地元の代表らも参加した開館式典で「WELCOME TO NALLYWOOD」「ようこそ映画の街成松へ!」という横断幕を披露した。「営業的には不利だが、やってよかった。東京でなくても全国に通じる仕事はでき、成松の不便さはむしろ武器になる。映画館がスタートになり、ここで文化が生まれ育まれ、成松が映画の街になれば」と力を込めた。

 今月12日までは「恐竜の詩ディレクターズカット版」「にしきたショパン」「劇場版ほんとうにあった怖い話~事故物件芸人2~」などを上映。今後も新旧洋邦を問わず、上映していく。一般1800円、大学生1500円、高校生、中学生以下は1千円。

 映画「銀幕の詩」は現在制作が8割終わり、来年2月に市内でプレミア上映する予定という。

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