香港の選手が初の金メダル、沸く市民 中国国歌に反発も
東京五輪のフェンシング・男子フルーレ個人で26日、香港の張家朗選手が優勝した。1997年の中国返還後、香港チームとして初の金メダル獲得。反体制的な動きを取り締まる香港国家安全維持法(国安法)のもとで暮らす香港市民たちが沸いた。
この日、香港のショッピングセンターで試合の模様が中継され、大勢の市民が会場を埋め尽くした。香港のネットメディアで報じられた動画によると、優勝が決まると「オー」という大歓声と拍手とともに、「We are Hong Kong(私たちは香港)」の声が響いた。
香港メディアのインタビューに答えた男性は、香港で反政府デモが相次ぎ、国安法の制定後に多数の逮捕者が出たことを念頭に、「この1、2年、気持ちが抑えつけられていたが、今日は興奮し、心が解放された気分だ」と答えた。
しかし表彰式で香港の旗が揚げられる際、中国国歌が演奏されると、歓声は一転してブーイングに。再び「私たちは香港」のかけ声が何度も上がり、国歌はかき消された。英国植民地時代の香港の旗を掲げる市民もいた。香港では昨年、国歌にブーイングするなどの侮辱行為を禁止し、刑事罰を科すことができる国歌条例が成立している。
香港は中国とは別の単独チームで五輪に参加しており、香港チームとして金メダルの獲得は史上2度目。香港政府は5月、東京五輪のテレビ放映権を買い取り、五つの民放放送局に無料で配布し、香港選手のプレーを中心に放映する態勢を取っていた。(香港=奥寺淳)