資本主義は危機の元凶か 藤原辰史さん×斎藤幸平さん

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西田理人 向井大輔
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 気候危機や広がる経済格差を前に私たちはどう生きるべきか――。歴史学者の藤原辰史さんが、資本主義の限界を説いた『人新世の「資本論」』で話題の経済思想家・斎藤幸平さんと16日、大阪市内で対談した。藤原さんがナビゲーター役を務める対談シリーズ「危機の時代を生き抜く哲学」(朝日カルチャーセンター中之島教室など主催)の第1回。会場およびオンラインで参加した約230人とともに、未来へのヒントを探った。

ふじはら・たつし 1976年生まれ、京都大学人文科学研究所准教授。専門は農業史、食の思想史。『ナチスのキッチン』で河合隼雄学芸賞、『分解の哲学』でサントリー学芸賞。ほかに『縁食論』など。

さいとう・こうへい 1987年生まれ、大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。哲学博士。『人新世の「資本論」』で新書大賞2021を受賞。

アメリカ留学で実感した「資本主義の矛盾」

 カール・マルクスの手書きのノートの解読などを通して、エコロジーの観点から新たなマルクス像を描き出した斎藤さん。近年は研究対象になることも珍しかったマルクスの原典を、なぜ今読み直すに至ったのか。藤原さんはまず、その「出会い」を尋ねるところから対談を始めた。

 斎藤さんの転機は米国留学中。資本主義への「実践的な関心」が、その後の運命を変えることになる。

 「ハリケーンカトリーナの被災地や、リーマン・ショックを目の当たりにして、経済格差など資本主義の矛盾を実感しました。そうした状況をきちんと理解するためにはまず、マルクスがどこまで考えていたのかを、明らかにしないといけないと思ったんです」

「環境」の視点から語り直される「階級」

 ベストセラーとなった『人新世の「資本論」』は、無限の成長を追い求めて、地球資源の収奪を繰り返す資本主義こそが、気候危機をもたらす元凶であると指摘する。この中で藤原さんが「大きな刺激になった」と言うのが、「低空飛行を続けていた『階級』という概念」に、環境問題の視点から光を当て直したことだ。

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