邦人に期待と落胆 インドネシア特別便に問い合わせ多数

半田尚子 佐藤達弥
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 新型コロナウイルスが猛威を振るうインドネシアから退避した日本人52人を乗せた全日空の旅客機が14日午後、成田空港に到着した。ゼネコン大手の清水建設が依頼した特別便。報道陣が見守る中、マスクやフェースシールドを着用した乗客が無言で次々と飛行機を降りていった。

 清水建設によると、特別便で帰国したのは同社社員とその家族。「希望者にはワクチンの職域接種をさせる」としている。座席数は246席あったが、清水建設以外の乗客はいないという。

 今回の特別便の受け入れについて、日本政府は3月以降、1日あたりの入国者を最大2千人程度としてきた制限の別枠とする特例措置をとった。国内航空会社は1週間あたり3400人、海外の航空会社は1便あたり40人としているが、その枠外とした。

 インドネシアから入国すると、10日間は国指定の宿泊施設での待機が必要。定期便全体の制限を緩和すれば施設が足りなくなる恐れがあるため、特別便を手配する側が待機施設を確保できることを条件とした。

 インドネシアでは7月に入り、新型コロナの感染者が急増し、14日には約5万4千人と過去最多を更新した。医療の逼迫(ひっぱく)で治療を受けるのも難しく、最近は死者が連日、800人を超えている。インドで見つかった新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)の広がりが一因とみられている。

 現地の日本大使館などによると、在留邦人の感染者数は約340人、死者数は14人と10日余りでそれぞれ70人、6人増えた。入院待ちも約50人に上り、在留邦人の間では危機感が一段と強まっている。

 ただ、今回の特別便は多くの在留邦人には寝耳に水。一時は政府が帰国便を飛ばすとの期待も膨らんだだけに落胆は大きい。日本大使館には「どうすれば乗れるのか」などの問い合わせが数十件あったという。

 女子大学生(21)は、帰国便を手配した後、新型コロナに感染。「症状が悪化しても入院できないのが不安。生きて日本に帰りたい」と話した。30代の駐在員の男性は「一般の人も利用できる特別便も運航してほしい。これでは特定邦人保護だ」と憤る。外務省幹部によると、大使館内に現地の日本人団体などと協力して特別便を運航することを想定したチームを新設。「待機する宿泊施設を自分たちで確保できるのであれば、今後もインドネシアに限らず、特別便を乗客数制限の対象外にすることもあり得る」(幹部)という。(半田尚子、佐藤達弥)

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