熱海の土石流現場から県警派遣の26人帰任

国方萌乃
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 静岡県熱海市で発生した土石流災害で、現地に派遣された和歌山県警広域緊急援助隊の26人が、10日に帰任した。現場で指揮した中垣亮中隊長(41)が現地での活動状況を報告し、土砂に阻まれ、捜索がなかなか進まなかった「はがゆさ」を語った。

 援助隊は6日に和歌山を出発し、7~9日の3日間、安否不明者の捜索や土砂のかき出しにあたった。

 到着すると、一面がぬかるんだ土砂に覆われていた。中垣中隊長は2011年の紀伊半島大水害でも不明者の捜索で出動したが、全く違った光景だった。「土砂は水と違って見通しが悪い」。地面が見えず、踏み出す先がどれほどの深さかわからない。棒で確認しながら一歩ずつ進んだ。

 援助隊が担当した区画は、土石流が発生する前は10軒ほどの民家などの建物があったが、土砂にのまれ、アパート1棟しか残っていなかった。このアパートで、行方がわからなくなっている住民を捜した。1階は土砂で埋もれていたため、2階に入って床に穴を開け、スコップで泥をかき出した。結局、住民は見つからなかったという。

 現場はまだ土砂がゆるやかだが流れていて、二次災害の恐れもあった。「気を抜くと、隊員が流されてしまう」。暑い中での作業で、熱中症への注意も必要だ。隊員を交代させながら、活動を進めた。

 小規模の崩落が起きたり、雨が降ったりした影響で、作業は2回中断した。和歌山からショベルカーやクレーンを持って行ったが、道が土砂で覆われ、使えずに終わった。「活動したいけどできない、進まない、もどかしさがあった」

 今も他県警の部隊や自衛隊らが捜索を続ける。「救助を必要としない状況になるには、まだまだほど遠い」と、状況の厳しさを語った。(国方萌乃)

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