警官のパレード参加お断り 揺れるNYの性的少数者たち
性的マイノリティーの権利を訴える、ニューヨークの恒例のパレードが6月末、2年ぶりに行われた。新型コロナウイルスからの「復活」を印象づける行事となった。ただ、警察との関係をめぐって波紋を呼ぶ決定もあった。パレードをめぐっては、商業主義に傾くことへの疑問の声も上がってきた。「何のためのパレードか」という原点を問う動きが出ている。
「ニューヨークが、戻ってきた!」
6月27日の日曜日、この声がマンハッタン中心部に何度も響いた。「ニューヨーク・プライド・マーチ」と呼ばれるパレードの参加者が五番街を行進し、沿道からは性的多様性を象徴する、レインボーフラッグを持った市民が声援を送った。
「プライド」の名前は、「ありのままの自分たちに誇りを持とう」という意味にちなむ。6月末にあるニューヨークのパレードは1970年から始まり、パンデミック前は数万人が加わっていた。同様のイベントは全米に広がり、現在は米政府も6月をLGBTらの理解や権利促進のための「プライド月間」と位置づけている。
ニューヨークは昨年、新型コロナウイルスの感染拡大の中心地となり、パレードも中止された。今年も例年と比べて規模は小さく、大半がバーチャルだった。それでも開催はコロナを乗り越えた象徴となった。
ただ、今年のパレードでさらに大きな話題となったのは、主催団体「ヘリテージ・オブ・プライド(HOP)」の決定だった。開催直前の5月、警察や矯正施設の職員が制服姿でパレードに加わることを、2025年まで禁じたのだ。理由として、黒人らマイノリティーやトランスジェンダーの人への暴力が続いていることを挙げ、「警察当局者の存在によって得られるはずの安心感は、理不尽に過剰な暴力を受ける人にとっては脅威となり、時には危険とさえなる」と説明。黒人が警察から受ける暴力などに抗議する、ブラック・ライブズ・マター(BLM)の運動の高まりなどを意識した措置だった。
この決定が大きな話題となったのは、プライド・マーチの歴史的な経緯も影響している。
起源は、1969年6月の出来事だ。同性愛者が多く集まる場所として知られていたバー「ストーンウォール・イン」に対し、警察が強制捜査を行い、多くの逮捕者が出た。当時の米国では、性的マイノリティーの権利はほとんど確立されておらず、州によっては同性愛行為が刑事罰の対象となることもあった。
だが、この強制捜査に対して…