「表現の不自由展」会場使用認める決定 大阪地裁

笹川翔平
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 大阪市内で16日から予定されている展覧会「表現の不自由展かんさい」の会場側が利用承認を取り消した問題で、大阪地裁(森鍵一裁判長)は9日、会場側の処分を執行停止とし、実行委員会に会場の使用を認めることを決定した。実行委員会が「安全の確保が困難だ」とする会場側の決定を不服として提訴し、処分の執行停止を申し立てていた。施設側は大阪高裁即時抗告する方針。

 展覧会は国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の出展作品を集め、16~18日に府所有の施設「エル・おおさか」(大阪市中央区)で開催が予定されている。展覧会の告知後、施設に対して抗議の電話やメール、街宣活動が相次いでいた。

 このため施設の指定管理者は6月25日、「利用者や入居団体の職員の安全を確保することは極めて困難だ」として利用承認の取り消しを決めた。府条例で取り消しができる場合を規定した「管理上支障があると認められるとき」に該当すると説明した。

 実行委員会は6月30日に大阪地裁に提訴し、抗議に脅迫などの内容は含まれず、警察に通報しなければならないものもなかったと指摘。「利用者に危険がおよぶ明白な危険があるとは言えない」と主張した。

 一方、会場側は大阪地裁に提出した意見書で、あいちトリエンナーレの企画展が激しい抗議活動を受けて一時休止となったことなどを理由に、展覧会が開かれれば「街宣活動や脅迫が激しく行われる明らかな危険がある」と反論した。入居団体の業務や利用者の行う会議、研修などに多大な支障が出ることが想定されるとして、申し立ての棄却を求めていた。

 名古屋市で6日に始まった同様の展覧会は、8日に会場の市施設に届いた郵便物の開封時に、破裂音がする事件が発生した。これを受けて市は11日まで施設を臨時休館すると決め、同日までの期間で予定されていた展覧会は事実上中止に追い込まれた。東京都内で予定されていた展覧会も、街宣活動を受けたギャラリーの辞退が相次ぎ、延期となっている。(笹川翔平)

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    遠藤乾
    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
    2021年7月10日16時43分 投稿
    【視点】

     抗議が殺到したといっても、取り消し当日までにあった抗議の電話・メールは約70件、抗議の街宣は3回だったという。それだけで「管理上支障があると認められる」とするのは恣意的で、大阪府(知事)の政治的立場の表れだろう。  本来なら、たとえ立場

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