シリアで人命つなぐ支援が瀬戸際 国連、継続決められず

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ニューヨーク=藤原学思 イスタンブール=高野裕介
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 内戦が続く中東シリアで、アサド政権の支配地域の外にいる住民への国連の人道支援が、存続の危機にある。活動期限が10日に切れるが、安全保障理事会がまだ継続を決められていない。新型コロナウイルスの影響で現地の状況は悪化しており、国連の支援は市民の命綱だ。

ロシア、主権侵害を主張

 国連は2014年7月の安保理決議に基づき、国境を越えてシリア市民に食糧や水などの必要物資を提供してきた。世界食糧計画(WFP)によると、現在は毎月1千台以上のトラックがトルコからシリア北西部のイドリブ県に入り、240万人がこの支援に完全に依存しているという。

 ただ、シリアのアサド政権の後ろ盾となっているロシアは、アサド政権側から物資を届けられると主張。「越境支援はシリアの主権と領土保全を侵害している」として、以前からこの活動に批判的な姿勢を見せてきた。

 安保理では、拒否権を持つロシアが反対する限り、決議を採択することができない。これまでもロシアがシリアをめぐって度々拒否権を行使。当初は国境を接するトルコ、イラクヨルダンの3カ国の計4カ所に越境拠点があったが、昨年1月にはトルコからの2カ所、昨年7月には1カ所だけに拠点が減った。支援物資の搬入がすべてアサド政権の支配地域を経由することになれば、政権側が敵視する反体制派の支配地域を「兵糧攻め」にするとの懸念がある。

 朝日新聞が入手した決議案によると、非常任理事国ノルウェーアイルランドは今回、現存するトルコの拠点とともに、イラクからシリアに入る拠点を復活させ、今後1年間にわたって2カ所から支援をする案を理事国に提示した。

 ノルウェーとアイルランドの国連大使は6日、報道陣に対し、「新型コロナ(の影響)が加わり、昨年よりもシリアの状況は悪くなっている」と指摘。支援の延期について「生死の問題だ」と強調していた。

 ただ、「2カ所の1年延期」案は絶望的な状況だ。AFP通信によると、ノルウェーとアイルランドは7日夜、現在の「1カ所1年」をそのまま延期する決議案を新たに理事国に配布。複数の安保理関係者も、現実的には、トルコの拠点1カ所をいかに維持させるかが焦点になっていると明かした。(ニューヨーク=藤原学思

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