「取材、極めて稚拙」NHK番組干渉疑いの批判、詳細に

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 NHKの最高意思決定機関、経営委員会の非公開の会合で、放送法が禁じる番組への干渉が繰り広げられたのか――。それを解き明かす議事録が2年半を経てようやく、全面開示された。詳細なやりとりから明らかになったのは、当時の委員会トップの2人が、番組への批判に積極的に関与した様子だ。

「経営委員会でも意見を言うべきだ」

 今回開示されたのは、経営委員会が当時の上田良一会長を厳重注意した2018年10月23日と、その前後の計3回分の議事録だ。報道で一部が明らかになっていた23日の議論だけでなくそれ以前の会議から、委員長だった石原進氏、委員長代行の森下俊三氏(現委員長)が、日本郵政グループの意向を紹介しながら議論を進めていた。

 厳重注意があった会議の前回にあたる10月9日。NHKの執行部は出席しない経営委員だけの会合で、この4日前に郵政3社長から経営委員会宛てに届いた「ガバナンス(企業統治)の検証」を求める書面が議題にあがった。

 俎上(そじょう)に載せられたのは、同年4月に放送され、かんぽ生命の保険を売る郵便局の不正な営業実態を伝えた報道番組「クローズアップ現代+(クロ現)」やその後の続報に向けた取材。この番組について、森下氏が「見てちょっと奇異だなと思った」と述べた。

 石原氏は、郵政がNHKの対応を問題視した経緯について「郵政には放送に詳しい方がいらっしゃる。そちらから何言ってるんだよという話になってしまった」と説明した。日本郵政副社長の鈴木康雄氏は放送行政を所管する総務省の元事務次官。この半月前には鈴木氏と森下氏が面会していたことが後に国会答弁などで明らかになっており、鈴木氏を念頭にした発言とみられる。

 これ以降、郵政に寄り添った流れで議論が進む。

 問題視されたクロ現は、複数の郵便局員が高齢者への不適切な営業実態を告白し、不正の実態を明らかにした。制作側は8月に続編の放送予定を見据え、7月に2本のネット動画を公開した。取材結果を一部明かしつつ、情報提供も募る「オープン・ジャーナリズム」という手法だった。

 森下氏はこの手法を問題視。「インターネットだけで取材をしてそれで番組をつくるということが、ちゃんと取材になっているのか。適切な取材のあり方というのは、経営委員会でも意見を言うべきだと思う」と言及。さらに、「一方的な意見だけが出てくるという番組はいかがなものか」と批判した。

「取材はほとんどしていない」

 異例の厳重注意がなされたのは、この2週間後。10月23日の会合でのことだった。

 この日は、執行部トップの上田会長も出席。冒頭で、NHK内の問題について調べる監査委員会が、執行部の郵政側への対応について「ガバナンス上の瑕疵(かし)は認められない」と報告をした。

 ところが、森下氏が「今回の番組の取材も含めて、極めて稚拙。取材はほとんどしていないです」と番組批判の口火を切った。

 森下氏は「インタビューした…

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