作品のない展覧会 大阪の美術館、学芸員も驚く反響

森直由
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 展示物はなく、会場に置かれているのはケースだけ――。大阪市天王寺区の市立美術館で、一風変わった企画展が開かれている。国の登録有形文化財にも登録された建物の展示室に、空のケースが計17個並ぶ。

 タイトルは「美の殿堂の85年 大阪市立美術館の展示室」。6月22日に始まると、SNSを中心に予想を超える反響があり、学芸員も驚いた。

 ケースは1936年の開館当初から使われてきた年代物。国宝や重要文化財の展示に使われたこともあるが、来年秋から予定される美術館の改修工事にあわせ、処分される見通しだった。そこで「ふだんあまり注目されることのない展示室やケースにスポットライトをあてよう」と考えたという。

 会場のひとつ、彫刻室は広さ約420平方メートル。終戦後に連合国軍に接収され、約2年間にわたり、バスケットボール専用コートとして使われたと伝えられている。そんな空間に空のケースがずらり。

 第2展示室(約150平方メートル)は対照的に、空のケースが中央にひとつだけ。室内の照明は落とされ、ケース内を照らす明かりが幻想的に広がる。

 会場内は撮影自由。担当の学芸員は「いろいろ想像を巡らせてみてほしい」。SNSでは「こんなに美しいとは」「趣向が面白い」などの感想があがっている。

 8月15日まで。月曜休館だが8月9日は開館する。一般300円、高校大学生200円。問い合わせは大阪市立美術館(06・6771・4874)。

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