第1回安倍氏から菅首相に続く「説明しない政治」 御厨貴氏
7年8カ月間にわたって政権を運営し続けた安倍政権とはどのようなものだったのか。そして、日本に残したものとは。内政、外交、それぞれの視点から識者たちが語る。
「未完の最長政権」第4部第1回 御厨貴・東大名誉教授
――安倍政権とは何だったのでしょうか。
「平成をまっとうした政権と言えます。平成最後の政権であり、令和のコロナ禍には対応できなかったからです。官邸主導と政権交代可能な二大政党制をめざした平成の改革が全部裏目に出て、とんでもなく長く続く政権になった」
――裏目とは?
「民主党政権が誕生した時、『改革はうまくいくかもしれない』と思い、自民が政権復帰しても『また、いずれは政権が代わる』という2大政党による政権交代への幻想がありましたが、それが全部なくなった。自民党内での疑似政権交代すらなくなり、すごい状況と言えます」
みくりや・たかし 日本政治史。1951年生まれ。政治家や官僚らの口述記録を歴史の検証に生かす「オーラルヒストリー」の第一人者。2018年9月までTBS系「時事放談」のキャスター。天皇陛下の退位をめぐり政府が設けた「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の座長代理を務めた。
――戦後で言えば佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎の各首相が長期政権を築きました。安倍政権との違いはどこにありますか。
「佐藤さんは人材を作りました。安倍さんをはじめとして最近の人材の作り方は、自分に敵する議員は全部駄目で、自分の味方になる議員だけを応援する。一方、佐藤さんは三木武夫であり、中曽根であり、自分と肌合いが合わない人でも、とにかく政権を担いうる政治家をたくさん作っておかねばならない、との思いで種をまきました。自分の後をかなり先々まで考えていました」
「中曽根さんは国鉄民営化などの内政でも、外交でもじっとしないで、いつも何か動いていました。これは安倍さんも似ている。でも、中曽根さんは『戦後政治の総決算』という明確な目標があって、それを実現するために着実に物事を進めていきました。そこが安倍さんと違います」
――安倍さんも憲法改正を中心とした「戦後レジームからの脱却」という目標があったのではないでしょうか。
記事の後半では、菅首相への評価や衆院選の争点についての考えも聞きました。
「その目標は未来を向いてい…