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「もう香港には帰らない」 周庭氏らと同世代の留学生

有料記事笹川翔平

 中国政府に批判的な論調の日刊紙「リンゴ日報」が廃刊に追い込まれるなど、香港の言論や表現の自由が急速に脅かされている。留学生の中には、卒業後も日本にとどまることを決める動きが出ている。リンゴ日報への弾圧の根拠となった香港国家安全維持法(国安法)の施行から1年。故郷の「自由の風景」が一変する中で、自分たちにできることを模索している。(笹川翔平)

民主活動家・周庭氏らと同世代

 「香港に帰ることは考えられない」。関西の大学院に在籍して人文科学系の研究職を目指す30代の男性は断言する。子どもの頃から「スラムダンク」などの日本のアニメに親しみ、アイドルグループ欅坂46のライブのために来日したこともある。

 「あこがれだった」という日本に留学したのは2019年だった。ところがその直後、民主化運動とそれに対する弾圧が激化し、死傷者が出る事態になった。日本語学校に通い、ラーメン店でアルバイトをする生活。夜になると現地の報道をネットで追い続けているうちに眠れなくなった。

 香港の民主化運動は、反政府デモ「雨傘運動」で学生リーダーを務めた周庭(アグネス・チョウ)氏や黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏らに代表されるように、同世代の若者たちが活動を担ってきた。知り合いの中にも、抗議活動中に突然、背後から刺されて負傷した人がいた。デモに参加した友人たちが自分の安否を知らせるため、SNSに「無事だった」「いま帰ってきた」と相次いで投稿するのを眺める日々。「何もできず、焦りが募った」

日本学生支援機構によると、日本の大学や大学院、専修学校などで学ぶ香港からの留学生は約1700人(2020年5月時点)。多くの留学生が、遠く離れた故郷の混乱に不安を抱いています。記事後半では、香港の市民の活動を伝えようと、現地で出版された抗議デモの記録集を翻訳する取り組みも紹介します。

 香港情勢はその後も緊迫した…

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