クマ大量出没、背景に「すみ着き」か 大学教授が調査

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平川仁

 クマが市街地に頻繁に現れるのは、エサの凶作だけが理由ではなく、近くの林にすみ着いているから。

 クマの生態を専門とする石川県立大学の大井徹教授が、そんな調査結果をまとめた。エサの豊凶にかかわらず、クマと遭遇する危険性が高まっているとし、住民への周知や、緩衝帯の整備などを呼びかけている。

石川県内、昨年は大量出没

 県内では昨年、1119件と記録的な大量出没があり、市街地での人身被害も相次いだ。出没は年が明けても続き、県によると、今年もすでに76件の目撃や痕跡情報が寄せられている。今月上旬には、海沿いの内灘町でも目撃され、小学校が集団下校になるなどした。

 大量出没の理由に決まって挙げられるのが、「エサの凶作」だ。大井教授によると、冬眠前の9~10月、山のブナやミズナラの実が少ないと、エサを求めて人里に下りるクマが多く、実際、大量出没と凶作の年は対応しているという。

 ただ大井教授は、秋と違い、キイチゴなどエサの量の変動が小さい夏の目撃情報も、毎年増えていることに着目。エサの豊凶と別の要因を探るため、金沢大学周辺で調査を始めた。

 金沢大学角間キャンパス周辺は、東側に白山や医(い)王(おう)山(ぜん)に続く森林があり、西側に住宅街が広がる「都市近郊林」。大井教授によると、2004年の環境省の調査では、「クマは生息していない」と報告されていたという。

 大学周辺の約20平方キロに19台のカメラを設置し、昨年6~12月、胸の模様などで個体が判別できたクマの数を数えた。

 その結果、クマの1平方キロあたりの個体群密度は少なく見積もっても、交尾期の6~8月に0・16頭、冬眠前の9~10月に約3・4倍の0・55頭と推測した。全国の森林地帯の平均値は0・12から0・20頭で、調査方法などが異なるため単純比較はできないものの、大学周辺は相当に高いという。

 秋については、エサの凶作が理由と推測。ただし、夏に、移動範囲が小さいとされる子連れのメスグマが撮影されていたことから、都市近郊林で定着と繁殖が進んでいることも影響していると考えたという。

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 夏の目撃情報は県全体でも増…

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