おしいれのぼうけん田畑精一さん 追悼展に見える生き様
いまにも動き出しそうな、生き生きとした子どもの姿。絵と文に込められた、平和への強い願い。「おしいれのぼうけん」「さっちゃんのまほうのて」などの作品で知られ、昨年6月に亡くなった絵本作家・田畑精一さんの追悼展「ありがとう 絵本作家・田畑精一の歩いた道」が、東京・池袋の「ギャラリー路草(みちくさ)」で24日に始まった。初日は関係者のみのささやかなセレモニーも開かれ、ゆかりの人たちが田畑さんの思い出を語った。
会場には、田畑さんが手がけた読み物の挿絵や絵本などの原画約120点のほか、絵本の仕事をする以前に関わっていた人形劇の人形も展示されている。
田畑さんは1931年に大阪市に生まれ、京都大学理学部に入り原子物理学に関心を持っていたが、「人形劇で子どもたちに感動を与えたい」と大学を中退。その後、故・古田足日(たるひ)さんと出会い、子どもの本の仕事を始めた。古田さんと共作した「おしいれのぼうけん」(74年、童心社)は世代を超えたロングセラーになっている。
「田畑さんそのものが、ここに」
展覧会は、田畑さんと親しかった絵本作家や編集者、児童書の研究者、デザイナーが集まって作った実行委員会が主催した。
実行委員長で、「14ひきのシリーズ」などで知られる絵本作家いわむらかずおさん(82)は「絵本にも、『子どもの本・九条の会』の代表団に加わった活動にも、『平和』と『子ども』というテーマが信念として貫かれている」とあいさつ。「おしいれのぼうけん」の編集者で、童心社会長の酒井京子さん(74)は「田畑さんはいつも、『生きたと言える人生を送りたい』と話していた。展示を見て、本当に、生きたと言える人生を生き抜いた人だな、とつくづく思いました」と話した。
親交があった、「わたしのワンピース」などの代表作がある絵本作家、西巻茅子(かやこ)さん(82)は、「遊ぶときは遊んでくれるけれど、芯は真面目で一生懸命仕事をする方だった。そんな田畑さんそのものが、ここ(展示された作品)に全部そろっている。どれを見ても、田畑さんだ、と思う」と語っていた。
展示は29日まで。開場時間は午前11時~午後6時(入場は午後5時半まで、最終日は午後3時閉場)。大人千円、高校生以下無料。また、田畑さんの言葉や歩み、ゆかりの人のメッセージを収録した書籍「ありがとう 絵本作家・田畑精一の歩いた道」(童心社)が、6月末に刊行される。