工場のCO2をエネルギー源に再利用 デンソー実証実験

三浦惇平
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 工場から出る二酸化炭素(CO2)を回収し、エネルギー源として再利用する。そんな技術の確立に、自動車部品大手のデンソー愛知県刈谷市)が挑んでいる。ものづくりの現場で、脱炭素を実現するためのカギを握る技術となりそうだ。

 昨年7月、「CO2循環プラント」が安城製作所(同県安城市)に完成した。このプラントは、ガス機器から排出されたCO2を回収。このCO2を水素と合成させてメタンをつくり、燃料として使えるようにする。デンソーが、同じトヨタグループの豊田中央研究所(同県長久手市)が共同開発した。

 実用化には課題もあり、実証実験を進めている。課題の一つは、CO2回収やメタン合成で消費するエネルギーを、最小限に抑えることだ。より効率的な再資源化をめざしている。また、今回つくったプラントの大きさは縦8メートル、横12メートル、高さ4メートル。工場内に設置しやすいように、小型化も必要となる。

 篠原幸弘経営役員は5月のオンラインイベントで「(こうした)CO2循環技術により、カーボンニュートラル工場をめざす」と説明した。デンソーは、2035年に生産過程のCO2排出量実質ゼロを目標に掲げる。省エネや、再生可能エネルギーの利用で、排出量削減に取り組んでいる。ただ、「再生可能エネルギーは供給が不安定」(篠原氏)といった課題がある。そのため、循環プラントのほか、太陽光でCO2から有機物をつくる「人工光合成」といった、CO2を有効利用する技術にも着手しているという。

 30年には事業化をめざす。広く普及させ、SDGs(持続可能な開発目標)の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に貢献する。

 製造業でもCO2排出量の多い重工・鉄鋼分野では、こうした開発がすでに進んでいるが、デンソーが狙うのは、自動車車部品など、排出量が比較的少ない業種での利用だ。効率的な回収が難しく、有効な技術は確立されていないという。将来は、家庭からの排出分や大気中のCO2の再利用もめざす。篠原氏は「これらの技術を早期に開発し、クリーンで快適な生活が送れる社会にしたい」と話す。(三浦惇平)

〈デンソー〉 愛知県刈谷市。1949年、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)の電装部門が分離して設立。車部品の国内最大手。

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