ヒト胚ルール見直し 「禁断」の領域に踏み出すわけは 

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神宮司実玲 瀬川茂子 後藤一也 阿部彰芳
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 研究のために、どれくらい長くヒトの受精卵(胚〈はい〉)を培養することが許されるのか。「14日間」が世界的に受け入れられてきた上限だった。このルールを見直す動きが出始めた。「禁断」とされた領域になぜ今、生命科学は踏み出そうとしているのか。

欧米や中国 「間違いなく研究進める」

 ヒトの胚の培養は14日までとするルールは、40年ほど前に提唱され、英国などでは法律で、日本では国の指針で規定されている。

 見直しに動いたのは、生命科学の分野で強い影響力を持つ国際幹細胞学会だ。5月、同学会の指針を改定し、14日を超える培養を解禁した。

 ただ、無条件に認めるわけではなく、科学や倫理の専門的な評価、承認を受けることとした。指針改定の委員会のメンバーで英フランシス・クリック研究所の発生生物学者、キャシー・ニアカン氏は、「14日を超えて培養したいグループに青信号を出すものではない」と強調する。

 今後は各国が規制をどう見直すかが焦点になる。

 改定作業に携わった京都大の斎藤通紀教授(細胞生物学)は「英国や米国、中国など、この分野の研究が進んでいる国は、間違いなく研究を進めてくるだろう。日本も世界の最先端にキャッチアップしていく必要がある」と指摘する。

 同じく改定作業に参加した大…

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    遠藤乾
    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
    2021年6月22日10時17分 投稿
    【視点】

     民主政=デモクラシーには盲点がいくつかあるが、科学技術はその一つ。最先端の研究を行う実験を、どれだけ民衆が理解し、制御できるだろうか。それは望ましいだろうか。研究者の創意工夫(自由)を殺ぐことが社会のためになるだろうか。そうした観点からは

    …続きを読む