仙台高裁判事の罷免を審理へ SNSで不適切投稿

阿部峻介
[PR]

 SNS上で不適切な投稿をしたとして最高裁から2度の戒告処分を受けた岡口基一・仙台高裁判事(55)について、国会の裁判官訴追委員会(委員長・新藤義孝衆院議員)は16日、裁判官弾劾(だんがい)裁判所に罷免(ひめん)(免職)を求めて訴追すると決めた。今後、国会の弾劾裁判所(裁判長・船田元衆院議員)が罷免するかどうかを審理する。

訴追は2012年以来、9人目

 訴追は2012年に大阪地裁の判事補が盗撮事件でされて以来、9人目。過去に訴追された8人(のべ9人)のうち、7人は弾劾裁判で罷免されている。

 岡口氏の代理人弁護士はコメントを発表し、「岡口氏には罷免事由に該当するような行為は全くなく、訴追決定は極めて遺憾だ。裁判官の独立、裁判官の人権や表現の自由に対する重大な脅威であり、ひいては国民の権利に大きな影響を及ぼすものだ」と批判。「来たるべき弾劾裁判で罷免事由が存在しないことを主張していく」とした。

 新藤委員長は記者団に「刑事事件、民事訴訟の関係者に対する投稿について、罷免の訴追をすることに決めた。慎重に審議した」と述べた。

事件の遺族ら、岡口氏の投稿で「侮辱された」

 裁判官弾劾法に基づき設置する訴追委は衆参両院の国会議員20人で構成し、非公開の議論で訴追か訴追猶予、不訴追の判断をする。訴追した場合に開かれる弾劾裁判所は公開の法廷で審理し、裁判員となる14人の国会議員のうち、審理に関わった議員の3分の2以上が賛成すれば罷免となる。不服申立の制度はなく、即時確定して法曹資格を失う。退職金は出ない。

 岡口氏は、民事裁判のマニュアル本を書いたり、主に司法や政治の分野について実名でツイートしたりする裁判官として知られた。書き込みの内容は、性的少数者ヘイトスピーチの被害者ら社会的に立場の弱い人を擁護するものが多かった。

 一方で、縄で縛られた上半身裸の男性の写真を投稿するなどして、16年に裁判所内で「品位を欠く」と厳重注意を受けた。その後も、個別裁判の当事者を揶揄(やゆ)するような内容を書き込み、殺害された女子高生の遺族らが「侮辱された」と訴追請求していた。

 これを受け訴追委は①殺害された女子高生に関するツイート(17年12月)②犬の所有権に関する訴訟で「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?」と書いたツイート(18年5月)――などについて、19年3月に岡口氏から事情を聴取。調査を付託された小委員会が同年6月に議論を終えた際は、訴追猶予という意見が多かった。

 だが、訴追委は国会情勢などを理由に、訴追の可否の議決を約2年持ち越していた。裁判官弾劾法は、問題行為から3年が経つと訴追できないと定め、結論が出ない間に①②は3年が過ぎた。

 ただ岡口氏は19年11月にも、殺害された女子高生の遺族について「遺族は東京高裁に洗脳されて(自分を)非難している」などとフェイスブックに投稿(③)し、これも調査対象になっていた。

 最高裁は18年10月と20年8月、②と③について「裁判官の品位を辱める行状」として、岡口氏に計2回の戒告処分を出した。(阿部峻介)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら