休校は感染を抑えたか 847自治体を分析した政治学者
新型コロナウイルスの感染が広がるなか、政府は昨年2月末、全国の小中高校に一斉休校を要請した。子どもたちや保護者らに大きな負担をかけた決断に、感染を防ぐ効果が本当にあったのかどうか、データに基づいて検証している研究者がいる。政治学者の福元健太郎・学習院大教授だ。どんな手法で分析し、どんな結果が出たのか、話を聞いた。
――研究の内容はどういったものですか。
学校を休みにすることで、コロナの感染にどういう影響があるかを調べました。単純に言えば、休校にした自治体(市区町村)としていない自治体とで、人口あたりの感染者の数が違うかどうか、比較したものです。休校したところの方が感染者が少なければ、期待された効果があったということになります。
公立の小中学校がどのくらい休校しているかについて、文部科学省は2020年3月から6月にかけて、全国の自治体を9回、調査しました。私たちはこの調査日を基準に、それぞれの直前の1週間と直後の3週間の感染者数を対象として分析しました。
その結果、休校したところとそうでないところで、感染者数に統計的に有意な、はっきりとした差は見られませんでした。むしろ、どちらかと言えば休校にしていたほうで、感染者が多かったほどです。
人口、収入、首長年齢…43要素を分析
したがって、休校したことによる感染を防ぐ効果はなかった。それが我々の研究の結果です。
――ただ、感染者数には、休校したかどうか以外のさまざまな要素が影響しますよね。
その通りです。そもそも、感染者が多くて状況が厳しいところほど、休校にしやすいとも考えられます。
ですから、例えばそれまでの感染者の数とか人口構成とか、様々な要素が似ているけれども、休校したかどうかという要素だけが異なる二つの自治体を見つけてペアにして、感染者数を比較するわけです。全国に計1741ある自治体のうち、27都府県の847自治体からデータが得られたので、最大で数百組の自治体のペアを作って比較しました。
――具体的にどんな要素が似ている自治体を比較したのですか。
あわせて43個あります。人口の多寡や人口密度、年齢の構成のほか、通勤などで他の自治体と行き来している人の数、住民の収入、学校の児童・生徒数、病院や医師の数、自治体の財政状況や首長の年齢や当選回数なども含みます。もちろん完全にはなりませんが、休校の有無以外の要素をなるべくそろえるようにしました。
43個ある要素のうち、どれを重視するのかが、難しい問題です。絶対にこれが正しい、という方法はありません。
私たちの方法を簡単に言うと、自治体ごとに振れ幅が大きい要素を重視するようにしました。たとえば人口の多さは、大きな市と小さな村ではかなり大きな違いがあります。一方で、学級あたりの生徒数であれば、どんな自治体でもあまり違いはありません。ですから、そこはあまり気にしなくていい、という理屈です。
――一筋縄ではいかない作業ですね。
とても手作業ではできませんので、コンピューターを使いました。ここを担当したのがハーバード大のチャールズ・マックレーン博士研究員です。これには5台のコンピューターで数日かかりました。データを収集するのは日本人の共著者がやってくれました。
――休校に効果がなかったの…
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- 【視点】
ご本人は照れて「(笑)」と言っていらっしゃいますが、当事者であることは貴重な出発点だと思います。 一斉休校に感染を押さえる効果はあったのか、休校・休園による子どもの心身への影響はどうだったのか。 小児科学でも発達心理学でも、すでにさまざ
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