「行きたくなる避難所」完成 豪雨災害教訓に快適さ追求

福冨旅史
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 西日本豪雨から7月6日で3年。土砂災害で12人が犠牲になった広島県熊野町に今月、新しい避難所が完成した。めざしたのは、誰もが「行きたくなる避難所」だ。

 町の中心部から約3キロの場所にある2階建ての建物。吹き抜けのロビーは間接照明が使われ、床やテーブルから木のにおいが漂う。授乳室やシャワー室、子ども用トイレのほか、児童書「かいけつゾロリ」など60冊以上をそろえた図書コーナーもある。

 「熊野東防災交流センター」は、最大500人が利用できる町の指定緊急避難場所だ。なかでも町が「一番の売り」とするのは、犬や猫など30匹が生活できるペット専用部屋。約100平方メートルのドッグランも併設し、公的な避難所としては全国的にも珍しいという。 「災害時だけではなく、町民が普段から気軽に集まれる場所にしたい。快適さをつくることが防災の第一歩」。花岡秀城・町防災安全課長はこう話す。コロナ禍にも対応し、国が示した「必要換気量」の基準を上回る換気扇を複数設置している。

 「快適さ」にこだわる背景には、豪雨災害の教訓がある。

 大雨特別警報が出されていた2018年7月6日。午後7時40分には町全域に避難指示が発令され、早急な避難が呼びかけられていた。だが、午後8時ごろに発生した土砂災害で、自宅などにいた12人が犠牲になった。

 どんな避難所なら避難したいと思うのか。町は18年11月から住民とのワークショップを計6回開催。子どもたちも学校で避難所のあり方について話し合った。「くつろげるスペースがほしい」「ペットと別の部屋で避難生活を送りたい」……。こうした声を踏まえ、公募で66社の提案からデザインを選び、昨年5月に着工。総事業費約6億3千万円の4割を国の交付金でまかなった。

 緊急事態宣言が解かれれば、グループでの食事や集まり、子どもたちの遊び場などとして開放する。横山大治センター長は「普段から行き慣れていない場所に避難しようとは思わない。従来の避難所のイメージではなく、誰もが行きたくなる避難所にしていきたい」と話す。

 町は来年3月末までに、同様の避難所をさらに2カ所設ける計画だ。

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