「レベル4で避難」ってどういうこと? イラストで解説

山野拓郎 編集委員・佐々木英輔

大雨が迫ったとき、どう行動すればいいでしょうか。最近聞くようになった「警戒レベル」とは? 「高齢者等避難」「避難指示」「緊急安全確保」とは? それぞれの情報が持つ意味について、イラストを交えて解説します。

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 避難を考える際に目安になるのが、行政機関の出す防災情報だ。ただ、情報の種類が多く、その軽重や取るべき行動がわかりにくかったことから、国は19年、5段階の大雨の警戒レベルに整理した。

 特に重要なのが「レベル3」と「レベル4」だ。それぞれ、自治体が出す「高齢者等避難」「避難指示」とひもづいている。

レベル3「高齢者等避難」 早めの行動の目安に

 「3」は、高齢者や障害がある人のような移動に時間がかかる人、支援が必要な人が避難を始めるタイミングだ。これまでは「避難準備・高齢者等避難開始」だったが、高齢者らが逃げ遅れて犠牲になる例が続いたことから、短くわかりやすい名称に改められた。

 この情報は、そのほかの人が警戒を強める目安にもなる。予定していた外出を取りやめる、離れた親類宅に逃げておくなど、早めに動くきっかけにしたい。

レベル4「避難指示」 危ない場所から避難を

 「4」では、危ない場所にいる誰もが避難を求められる。これまでは「避難勧告→避難指示(緊急)」の二段構えだったが、避難のタイミングがはっきりするよう、「避難指示」に一本化された。

 とはいえ「指示待ち」に陥らず、自ら状況を把握することも大切だ。風雨が強まってからの立ち退き避難は危険を伴う。

豪雨被害に遭わないために 命を守る備えをイラストで

避難するには、事前に危ない場所かどうかを「ハザードマップ」で確認しておく必要があります。注意点をこちらの記事とイラストで解説しています。

「危険度分布」で情報収集も

 スマホやパソコンを使えば、気象庁のサイト「キキクル(危険度分布)」で、刻々と変わる浸水土砂災害の危険度が色で分けられて地図に細かく表示される。登録した場所の危険度の高まりを通知するサービスも民間のアプリで提供されている。

 キキクルの愛称は今年、公募で決まった。これまでに降った雨量だけでなく、直近の雨量予測や地域の災害の起きやすさを加味して出している。紫色が現れたら「レベル4」相当。災害は目前まで迫っている。

 このほか、「土砂災害警戒情報」はがけ崩れや土石流の危険が迫っていることを示し、レベル4相当に位置づけられている。大きな川だと「氾濫(はんらん)危険情報」が4相当。雨のピークを過ぎてから水位が上がることもあるので注意が必要だ。

 「記録的短時間大雨情報」は、めったにないような雨量を記録したときに出る。激しい雨が同じ場所で降り続いていることを伝える「顕著な大雨に関する情報」の発表も、6月17日から始まる。

気象庁の「キキクル(危険度分布)」はこちらから

浸水、洪水、土砂災害の危険度が色分けで表示される。雨雲の動きも。

国土交通省「川の防災情報」はこちらから

川の水位やライブカメラ、ダムの情報も。

レベル5は命の危険 「緊急安全確保」どうすれば

 命の危険があり、直ちに身を守る必要があるのがレベル5の「緊急安全確保」だ。これまでの「災害発生情報」から改めた。災害が発生したか、起きかけている状況にあたる。

 例えば、川があふれ出す水位になったり、がけ崩れがいつ起きてもおかしくない状況になったりしても出るが、必ず発表されるわけではない。大雨特別警報も、レベル5相当と位置づけられている。

 この段階での立ち退き避難は危ない。その場でどう身を守るのが最善かを自ら判断するしかない。

 内閣府が例に挙げるのが、少しでも高い階に上がる、がけから離れた側の部屋に移る、といった行動だ。屋根に上がったり、近くの丈夫な建物に移ったりすることも考えられる。

 岡山県倉敷市真備町などに大きな被害をもたらした18年の西日本豪雨では、2階建ての建物の1階で犠牲になった人も少なくなかった。高齢者は屋内移動も時間がかかる。浸水が始まるとさらに阻まれてしまう。

畳は浮き、家具は倒れる

 東京理科大の二瓶泰雄教授(河川工学)らの実験では、水深がわずかでも畳は浮き上がり、ひざの高さくらいまでくるとたんすが倒れる。夜間で明かりがないと逃げる方向も見失う。学生が部屋を抜け出すのにかかった時間は平均2分。出られなかった人もいた。

 「2階で寝るようにするだけで、助かる命はある」。二瓶さんは言う。家具の固定は、地震だけでなく水害でも生きてくる。

 水につかってしまったら救命胴衣になるものがあると助かるかもしれない。高齢者の介助にみたて、体が水につかったマネキンを運ぶ実験では、浮力で軽くなり、顔も水面につきにくくなった。リュックに空のペットボトルを詰め、前に抱えれば代わりになる。

 いずれにしても、後になるほどとれる行動は限られる。危機に陥らないようにするのが何より大切だ。(山野拓郎、編集委員・佐々木英輔

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