第8回出口失った日ロ交渉 安倍氏の譲歩「マイナス」遺産に

2019年2月、北方領土交渉に暗雲が漂う中、外務省OBが首相公邸に集まった。安倍首相を囲み、対ロ交渉に慎重意見を述べるOBたち。出席者の一人は、首相のある言葉をおぼえているという。

「未完の最長政権」第3部第8回

 対ロ交渉に暗雲が漂うなか、2019年2月28日夜、首相公邸に外務省出身者が集まった。国家安全保障局長の谷内正太郎のほか、薮中三十二、佐々江賢一郎、斎木昭隆といった外務次官経験者、元駐ロシア大使の野村一成らが、首相の安倍晋三を囲んで会食した。

 「総理、後世の歴史家がどう評価するか、考える必要があります」

 関係者によると、対ロ外交に慎重な意見が相次ぎ、出席者の一人がこう発言した。すると、安倍も「自分も政治家だから歴史に名を残したいという気持ちはある。だが、それより大事なのは国益だ」と語ったという。安倍はまた、4島返還から歯舞・色丹の2島返還にかじを切った自らの方針を念頭に「プーチンは現に4島を保有している。2島引き渡すことになればロシア国内で批判を受けるだろう」とも述べたという。

【プレミアムA】 未完の最長政権第3部

 「外交の安倍」。2012年に首相の座に返り咲いた安倍晋三前首相はそう呼ばれた。「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、訪問国は80カ国を数える。「未完の最長政権」第3部では、安倍外交の内実を検証する。

 メンバーは谷内が人選した…

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