応挙の真筆の幽霊画、青森の寺で確認 国内初

林義則
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 青森県弘前市教育委員会は20日、同市の久渡(くど)寺に伝わる幽霊画が、江戸時代に活躍した絵師の円山応挙(1733~95年)が描いた真筆と確認した、と発表した。調査した市文化財審議委員によると、応挙の真筆と判断された幽霊画は国内で初めて。市教委は同日、委員の答申を受けて市有形文化財への指定を決めた。

 幽霊画は同寺が所蔵する「絹本墨画淡彩返魂香之図(けんぽんぼくがたんさいはんごんこうのず)」(81年ごろ)。応挙の真筆とされる幽霊画はこれまで、米カリフォルニア大バークリー校付属美術館にある画が唯一とされていた。

 市文化財審議委員によると、返魂香之図の箱に入った図説やふた書に「応挙作」「弘前藩家老の森岡主膳(35~85年)が84年に久渡寺に寄進した」などの記載があり、当時の状況が市内に残る墓石や過去帳の調査で裏付けられた。

 また、返魂香之図の幽霊画とバークリー校付属美術館のものを比べると、構図や制作期が近く、髪を描いた細かな線や衣装などの描写が「まったく遜色ない」として、真筆と判断した。

 返魂香之図は、正妻とめかけを相次いで亡くした森岡主膳がその面影を偲(しの)ぶため、応挙に注文したと考えられるという。市文化財審議委員の一人で応挙の作品に詳しい内山淳一・宮城学院女子大特任教授(美術史)は「制作や依頼の状況が証明できる稀有(けう)な例だ」と話した。

 返魂香之図は久渡寺で毎年、旧暦の5月18日に公開される。市教委は市有形文化財への指定を受け、「公開の機会を増やしていきたい」としている。(林義則)

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