第3回尖閣譲歩「中国に錯覚」指摘 安倍外交、対中協力の功罪

 中国の一帯一路への協力姿勢をとったことには、外交関係者の間でも功罪が指摘される。大使経験者が指摘するのは「尖閣諸島」との関係だ。

「未完の最長政権」第3部第3回

 首相の菅義偉が初めて臨んだ4月16日の日米首脳会談。その共同声明には「日米両政府は、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた我々の政策を調整・実施するためのものを含め、あらゆるレベルで意思疎通することを継続する」との方針が盛り込まれた。

 「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」とは、2016年に安倍晋三が、米国に先駆けて提唱した外交方針だ。当初は、軍事と経済の両面で台頭し、中国の一帯一路に対抗しようと打ち出したものだった。

 貿易問題で対中強硬路線をとる大統領のトランプが、そのFOIPを米国のアジア政策として追認。バイデン政権もこれを継承している。

 だが、日本のFOIPは、いま一つ軸足が定まらない。政府は当初、尖閣諸島周辺や南シナ海での中国の威圧的な活動、民主主義や国際的ルールへの挑戦に対抗するとの「対中競争」に力点を置き、「インド太平洋戦略」と呼んでいた。

 しかし、中国の一帯一路構想に協力する意向を書き込んだ「親書書き換え」以降、「インド太平洋構想」と呼び方を変えた。政府関係者は「官邸内で中国を刺激する『戦略』という言葉は避けるべきだとの議論があった」と明かす。

【プレミアムA】 未完の最長政権第3部

 「外交の安倍」。2012年に首相の座に返り咲いた安倍晋三前首相はそう呼ばれた。「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、訪問国は80カ国を数える。「未完の最長政権」第3部では、安倍外交の内実を検証する。

 一帯一路への対抗軸だったは…

この記事は有料記事です。残り692文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません