「野球観戦チケット贈呈」「抽選で100万ドルが当たる」「狩猟免許交付します」――。
新型コロナワクチンの大量の在庫を確保している米国で、官民挙げて接種率を押し上げようと、あの手この手をくりだしている。これまでに全米市民の5割弱が接種を完了したが、接種数は4月中旬をピークに減少傾向が続き、頭打ちになっているためだ。政府が7月までに成人の7割接種を目標にするなか、ワクチンはあるのに打たない人への対策が課題になっている。
有給時間休、抽選で100万ドル
《無料ワクチン、無料乗車》。12日朝、ニューヨーク(NY)中心部のグランドセントラル駅構内に、そんな横断幕が掲げられた。コロナ禍以前は1日平均75万人が利用していた巨大ターミナル駅にこの日、ワクチンの接種会場がオープンした。
16歳以上の米市民であれば誰でも、1回の接種で済む米ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを受けることができる。しかも、同駅などNYの8カ所に設けられた駅構内の会場でワクチンを受けると、地下鉄やバスが1週間乗り放題になる券(33ドル=約3600円)までもらえる。
会社員のミホ・キトさん(45)は通勤前に立ち寄った。「予約もいらないし、すごく気軽。周りもどんどん打ってるから、私もそろそろ受けようかなと」。NY州では上限4時間の「ワクチン有給時間休」が認められており、それも接種の後押しになったという。
NYではほかにも、動物園や水族館、植物園の入場が無料になったり、大リーグのヤンキースやメッツの観戦チケットがもらえたりと、ワクチン接種の推進策は多岐にわたる。
他の州にも、多様な「ワクチン特典」がある。
オハイオ州は18歳以上の接種者5人に対し、抽選でそれぞれ100万ドル(約1億1千万円)を贈呈する。17歳以下も5人を抽選で選び、州立大の学費や寮費をまかなう奨学金を出す。
ウェストバージニア州は若年層の接種率を上げようと、16~35歳の接種者に、100ドル(約1万1千円)相当を配布すると知事が発表。この対象者の8割にワクチンを受けてもらい、州全体では接種対象者の7割に到達することを目標としているという。
自然豊かなメーン州は、接種者に狩猟や釣りの免許を交付するほか、州内に拠点を置くアウトドアメーカー「LLビーン」のギフト券20ドル分を提供。ニュージャージー州では醸造所でビール1杯、コネティカット州ではレストランでドリンク1杯が、それぞれ無料になる。こうした政策には、外出した市民が地域の経済を潤す狙いもある。
カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の3~4月の調査によると、ワクチン未接種者は、お金をもらえるか、マスクの義務化がなくなるという条件があれば、ワクチンを受ける意思が強くなるという傾向がみられたという。(ニューヨーク=藤原学思)
ドーナツやビール 企業も動く
企業も顧客に対してさまざまな特典を用意し、接種を促している。
ドーナツチェーン「クリスピ…
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