けがに悩んだ陸上・山県と並走 支えるコーチの指導理念
加藤秀彬
コーチをつけず、1人で走りに向き合うことで知られる陸上男子100メートルの山県亮太(28)が今季から専属指導を仰いでいる。ただ、指導するプロコーチ、高野大樹(だいき)さん(32)は選手として全国で目立った実績はなく、日本代表の男子選手を教えた経験もない。義足アスリートも指導する異色の指導者だ。
開幕直前、突然のSNS
「ちょっと、お話ししたいことがあります」
山県からSNSのメッセージを受け取ったのは、シーズンが開幕する直前の2月上旬だった。
「なぜ自分なのか」
そう驚いたのも無理はない。山県の母校・慶大でも競走部短距離コーチを務め、練習場で交流もあったが、山県の在学中には指導していない。また、女子100メートルハードル日本記録保持者、寺田明日香(31)を指導しているが、山県と同じレベルの男子選手を教えた経験もなかった。それに、山県が自分自身で走りを追求しているのも知っていた。
山県はこう依頼した。
「これまでの自分で練習メニューやフォームを考えるスタイルは貫きたい。今は、それを一緒に考えてくれる人が欲しい――」
「自分を貫く」を受け入れられたのは…
自分の理想の走りを選手に当てはめたい指導者ならば、受け入れがたい相談だったかもしれない。だが、高野さんは違った。
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埼玉大や大学院で110メー…