京都市「返礼品競争」に本格参入 ふるさと納税7倍
京都市のふるさと納税が急増している。京都ならではの返礼品を取りそろえ、2020年度は前年度の約7倍の寄付を得た。かつては「返礼品競争」に否定的だったが、ふるさと納税に頼らざるを得なくなった事情がある。
お茶の老舗「一保堂」の抹茶スターターキットや、「よーじや」のあぶらとり紙、しば漬け発祥地とされる大原の京漬けもの詰め合わせ、老舗漆器店「象彦」の重箱――。京都らしく、知名度もある多彩な品々がウェブサイトに並ぶ。
すべて、京都市のふるさと納税の返礼品だ。
5月以降には、竹とビニールでつくったユニークな蛇の目傘の「ビニール京和傘」もラインアップに加わる。人気放送作家の小山薫堂さんがプロデュースした、オリジナルの一品だ。
2020年度の返礼品は約600品目に及ぶ。19年度の6倍にあたる。
なかでも、おせち料理がヒットした。市内41の老舗料亭や有名店のおせちで約6億円をもたらした。目玉は、ミシュラン三つ星の料亭「京都吉兆」のおせち。アワビやからすみなど31品目がお重に入って50万9千円と高額ながら、18セット分の寄付を得た。市の担当者は「新型コロナウイルスの影響で、おうち時間が増えた。豪華な京都のおせちを自宅でという人が増えた」と分析する。
こうした返礼品の影響などで、京都市に届いた20年度のふるさと納税額は19年度の7倍、約18億円になる見込み。市民がふるさと納税でほかの自治体に寄付した20年度の「流出」額は約40億円。うち75%は地方交付税で「穴埋め」されるため、実質的には初の黒字となる見通しだ。
門川大作市長は「全庁で取り組んだ結果だ。京都の伝統産業や食文化の振興にも役立った」と語る。
続けてきた「禁じ手」
ただ、手放しで喜べない事情がある。深刻な財政難に陥っているためだ。
市は、福祉や子育て支援など…