楽天テンセント問題で露呈 外資規制の「抜け穴」を塞げ

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聞き手・福田直之
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 中国IT大手テンセントの子会社が3月末、楽天(現・楽天グループ)株の3・65%を取得しました。日本の通信インフラ企業に米国が安全保障上のリスクを指摘する会社の資本が入ったことに、政府関係者からも懸念が出ています。事前の審査もなく出資できたのは、外国からの投資を規制する改正外国為替及び外国貿易法外為法)の例外規定が使われたから。経済産業省OBで経済安全保障に詳しい明星大学の細川昌彦教授は、審査を厳格化する制度改正を求めています。

 ――今回の出資はどこに問題があるのでしょうか。

 中国には企業や国民にスパイ活動への協力を義務づける国家情報法があります。テンセントのスマートフォン向け対話アプリ「ウィーチャット」は世界で12億人が利用し、米国はこのアプリで米国民の個人情報が把握され、中国政府に流れかねないと懸念しています。トランプ前大統領が出した使用差し止めの大統領令は司法判断で差し止められましたが、情報流出の懸念は今も払拭(ふっしょく)されていません。中国政府は民営企業であるテンセントなどIT大手にも統制を強めています。

 一方の楽天は通信インフラを担うだけでなく、ネット通販が中核で膨大な個人情報を持っています。例えば今後、楽天がテンセントを足がかりに中国に進出したなら、テンセントは楽天の顧客情報を入手しやすい環境になります。楽天は「デジタルプラットフォーマー」としての個人情報に対する責任感が欠如していると感じます。

 ――外為法は2020年5月に改正されたばかりです。経済と安全保障を一体ととらえる経済安全保障の観点から、事前の届け出が必要な出資の比率を10%から1%に下げて審査の対象を拡大したという触れ込みでした。

 外為法は通信インフラのような「コア業種」を指定し、外資が1%以上の株式を取得する場合に事前の届け出を義務づけています。安全保障上の懸念がないか審査をするためですが、これには特例があります。

 役員を出さず、非公開の技術情報にアクセスしないといった条件に加え、重要な意思決定権限を持つ委員会に参加しないといった追加の基準を守れば、コア業種かつ1%以上の出資であっても事前届け出を免除しています。事前審査が増えるのを嫌った外資系証券の声を受けて導入されました。テンセントはこの規定を利用し、審査を受けなかったのです。

 ――違反ではないということですか?

 ただ、おかしなことがありま…

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