主夫になった大久保嘉人 息子と2人生活、即席麺は引退

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 「何をやっても取れないんだけど!」

 遠く離れて暮らす妻にSOSを送ったのは、サッカーJ1で絶好調の大久保嘉人。三男のサッカーソックスに絡みついた芝が、はたいても、粘着テープを使っても取れず、格闘していた。

 つい数カ月前までは、38歳の妻莉瑛さん、15歳の長男碧人(あいと)さん、11歳の次男緑二(りょくじ)さん、9歳の三男橙利(とうり)さん、4歳の四男紫由(しゆう)さんと、神奈川で暮らしていた。だが、いまは自宅を離れて大阪で生活を送る身だ。

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 20年に及ぶプロ生活の中で、日本代表のワールドカップ16強入りに貢献したこともある。そんなストライカーも38歳。第一線で活躍する同世代はほぼ見当たらない。J2の東京ヴェルディ1969で、昨季は無得点という屈辱を味わった。

 「これが最後だから」と引退を覚悟した。プロとしての一歩を踏み出した古巣で花道を飾りたい。そう思っていたところにオファーが届いた。15年ぶりにセレッソ大阪へ戻ることを決めた。単身赴任を目前にした冬、小学3年生だった橙利さんから告げられた。

 「オレも行きたい」

 子どもの面倒はよくみるが、家事には無関心。なのに、大久保は「橙利にとって良い経験になる。何とかなるよ」。妻の心配をよそに橙利さんを転校させ、父子2人きりの生活を始めた。

 家事を手伝ってくれる人はいない。朝7時に起きて朝食を用意する。橙利さんを起こし、8時前には学校へ送り出す。自分が練習から帰宅すると、今度は橙利さんのサッカースクールへと2人で自転車をこぐ。「宿題やったか?」「プリント出して」というのが毎日の決まり文句になった。

 疲れて帰っても、床が汚れていれば真っ先に掃除機をかける。夜になると、橙利さんの翌日の服や持ち物をきれいに並べ、2段ベッドの下の段でわざわざ寄り添って眠る。不慣れな“主夫生活”に「いやあ、大変」と言うものの、どこか楽しげだ。

 移籍初戦となった2月27日のJ1開幕戦。3日前に主力に抜擢(ばってき)されたばかりだったが、自身の持つJ1最多得点記録を更新してのけた。455日ぶりとなる通算186点目を、必死のヘディングで決めた。今季はここまで5ゴールし、リーグの得点ランキングに名を連ねている。

 家族は39歳になる2021年のブレークを予感していたという。

 オフになると、糸が切れた凧…

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