圧巻のディストピア 手塚治虫文化賞、桜庭一樹さん選評

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 手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の第25回受賞作が決まりました。社外選考委員を務めた小説家の桜庭一樹さんの選評は次の通りです。

桜庭一樹さん(小説家)

 マンガ大賞を受賞された「ランド」は、大昔の話かと思いきや、現代の日本が抱える様々な問題を内包するディストピア世界が広がっていき、圧巻でした。大好きな山下和美先生に最終的に一票を投じました。

 他、推薦した作品も三つ最終候補に残っており、推したい気持ちが渋滞してとても悩みました。「かしこくて勇気ある子ども」は、香港やミャンマーの問題とも呼応し、“変革は一人の英雄ではなく、社会を構成する全員によって成し遂げられる”という力強い社会的メッセージを感じました。「青野くんに触りたいから死にたい」は、一巻刊行時から愛読しており、読者の予測を許さない鬼才だと思っています。「葬送のフリーレン」には、冒険(青春)が終わってからの人生がじつは長く、生きることや、一つ一つじわじわ成長することの本番かもしれないと深く考えさせられました。こちらは新生賞を受賞されることになり、うれしかったです。

 その新生賞には、「マイ・ブ…

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