デジタル法案「最初の3原則が骨抜きに」 山田健太教授
デジタル庁創設や個人情報保護法の改正を盛り込んだ「デジタル改革関連法案」について、参院内閣委員会の審議が20日はじまった。今回の法案について、「個人情報保護が空洞化する」と警鐘を鳴らす専修大学の山田健太教授(言論法)に聞いた。
――3月の衆院内閣委員会の参考人質疑で、同法案のワーキンググループがまとめた「デジタル社会を形成するための基本原則」(10原則)の考え方と、法案や政府の姿勢との矛盾を指摘しました。
昨年末に閣議決定された基本原則には「誰ひとり取り残さないデジタル化」など聞こえのよいことが書かれていたが、法案には「オープン・透明」「公平・倫理」「安全・安心」という最初の三つの原則が骨抜きになっている。
例えば、「公平・倫理」の項目には、「個人が自分の情報を主体的にコントロールできるようにする」と明記されていたが、今回の法案には権利として盛り込まれていない。逆に本人同意なしの第三者提供や匿名加工情報の提供が拡大する可能性が含まれている。権利をきちんと保障しないと、バランスがとれない。
また、「安全・安心」は普通に考えれば、情報の漏洩(ろうえい)を防ぐことだ。ヨーロッパは漏洩を防ぐため、国が収集した情報をできる限り一括で管理せず、分散管理を進めているが、今回の法改正は逆に、政府による集中管理に踏み出そうとしている。政府が何を「安全・安心」と考えているかがよく見えないことも残念だ。
――情報公開や公文書管理などにおいて、政府の透明性の欠如も懸念されています。
今回の法律の大きな目的は情報の利活用だ。業務の迅速化や、国民の命を救うという面では政府に個人情報を集約化しないといけないこともあるかもしれない。だが、その際の大前提は、政府がやっていることの「見える化」、そして国民の政府への信頼だ。
しかし、現状は情報公開をおろそかにしている側面が強く、公文書の改ざんや隠蔽(いんぺい)や廃棄が起きている。新型コロナウイルス対策のアプリの契約も不透明だ。「オープン・透明」の原則とはかけ離れている。
――衆院での審議をどのように見ましたか。
まず、全部で63本ある法案を27時間あまりで審議すること自体に問題がある。
首相がトップのデジタル庁をつくるという法案には共産党以外の各党が賛成したが、「権限を集中していいのか」という国の仕組みについてほとんど議論がなかった。
また、63本を束ねて審議された関連法案の最大のポイントは、個人情報保護の制度が変わることだ。行政機関や民間など三つに分かれている現行法を一本化し、自治体ごとの条例で定めたルールも共通にする是非について、議論が尽くされていない。
――自治体ごとにルールが異なることで、災害時などに自治体間の情報共有が難しいという弊害も指摘されています。ルールやシステムを共有化することは良いことなのではないでしょうか。
情報収集をしたい人はそう思…
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