うつに苦しんだ理系職人、薄さ7ミリの二つ折り財布生む
うつ病に苦しんだ理系の元会社員の男性が、厚さ7ミリの革財布を生み出した。理系の知識を生かし、財布のずれを防ぐ形状などの特許も取得。キャッシュレス決済の普及で、紙幣や小銭を極力持たない生活スタイルが広がるなか、インターネットで寄付を募ると計1070万円が集まり、量産にも乗り出した。
男性は、千葉市花見川区で工房「革のある暮らし」を営む沢田直樹さん(45)。作ったのは、牛革の二つ折り財布(縦横約10センチ、厚さ7ミリ)で、銀行のカードなどが3枚、紙幣は10枚ほど収容できる。小銭も多少入る。
商品名「理(ことわり) kotowari」は、財布の薄さと使いやすさを両立させるデザインを突き詰めた、との意味を込めた。財布をたたむ際に使う帯や、紙幣を収める部分を工夫し、紙幣が飛び出したり、財布の形が崩れたりすることを防いでいる。この形状で特許をとった。
沢田さんは、東京工業大学の大学院で原子核工学を学び、大手電力会社や大手タイヤメーカーで働いた。しかし、職場環境になじめなかったり、長時間の残業が続いたりし、うつ病に苦しんだ。疲れ切り、社内で壁にぶつかりながら歩いていた時期もあったという。
「外で働くのはもう厳しい。好きなことをやろう」。生き方を変える決意をしたのは4年前。小さい頃から革の匂いや肌触りが好きで、趣味で革製品を作っていた。
工房を始めた当初は「良いモノを安く」と、バッグや名刺入れを作ったが、なかなか売れず、2年間は赤字が続いた。
転機は昨年1月。自作の財布を商工会議所の先輩に見せたところ、「普通で面白くねえな。絶対売れない」と一蹴された。「人が作っていないモノを作らないとダメだ」と気づかされた。
「これからはキャッシュレスの時代。より小さい財布が求められる」と改良を重ね、昨年3月に今回の財布が完成。6月には、改良版も作った。ネット上で寄付を募るクラウドファンディングで「1万4千円~1万8千円で財布を贈る」との条件で資金を募ったところ、676人から計約1070万円が集まった。
工房では妻の治美さん(43…
【春トク】締め切り迫る!記事が読み放題!スタンダードコース2カ月間月額100円!詳しくはこちら