秋葉外務次官、在任最長に 安倍・菅政権の信頼厚く

倉重奈苗
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 外務省の秋葉剛男事務次官(62)の次官在任日数が16日、戦後最長になった。秋葉氏は菅義偉首相の信頼も厚く、同日(現地時間)に米ワシントンである首相とバイデン大統領との首脳会談の実現に貢献した。高い実務能力や「タフ・ネゴシエーター」とも称された交渉力で、多くの日本外交の節目に関わってきた。外交・安全保障政策の司令塔である国家安全保障局トップ、局長の最有力候補と目されている。

 秋葉氏は1982年に入省。2002年、小泉純一郎首相が金正日(キムジョンイル)総書記と交わした日朝平壌宣言の文案作成を条約課長として主導。その後、アメリカンスクール出身としては当時異例だった中国課長に就任し、06年に安倍晋三首相が訪中して胡錦濤国家主席との会談で打ち出した「戦略的互恵関係」のコンセプトづくりに携わった。

 民主党政権時代の10年、前原誠司外相とクリントン米国務長官が会談。クリントン氏はこのとき米国務長官として初めて、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用を明言したが、米側への働きかけに秋葉氏も一役かったとされる。秋葉氏は当時、周囲に「この発言の政治的意味の大きさは後にわかる」と語った。

 尖閣諸島をめぐる対立で日中関係が悪化する中、12年に第2次安倍政権が発足。政権は、途絶えていた首脳外交を動かそうと中国側と水面下で交渉を続け、14年11月に「日中関係の改善に向けた話し合いについて」と題する4項目からなる合意文書を発表した。尖閣諸島など東シナ海海域での「緊張状態」について、「双方は、異なる見解を有していると認識」などとする表現で折り合いをつけた。この合意により、安倍氏と中国の習近平(シーチンピン)国家主席との首脳会談が実現したが、秋葉氏は国際法局長として、文書作成を実質的に担った。

 第2次安倍政権で、ロシアとの北方領土交渉をめぐり、首相側近の今井尚哉政務秘書官らと外務省ロシアスクールが対立した。外務審議官だった秋葉氏は、官邸とのパイプ役として仲介。秋葉氏をよく知る元政府高官は「官邸主導の中でも、ぎりぎりの中で外務省の主張や立場を守ろうとしていた」と話す。(倉重奈苗)

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