日向灘地震 最短12分で津波到達 最新の想定示される

矢鳴秀樹
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 宮崎沖の日向灘を震源とする「日向灘地震」でマグニチュード(M)7・6の規模の地震が起きた場合、県内には最短12分で津波が到達するとの想定がこのほど示された。南海トラフ巨大地震の想定よりも4分早い。人的被害では、死者数最大約1700人、負傷者も6500人に上るとの数値も示された。県内も大きな揺れに襲われた熊本地震から5年。県は「早期の避難が必要」と注意を呼び掛ける。

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 県が昨年、東京の地質会社に依頼した調査結果がまとまり、県防災会議の地震専門部会で公表した。

 日向灘地震は過去の記録から、1662年にM7・6の地震が起きたとみられており、1931年以降もM7前後の地震が周期的に起きている。2025~35年ごろの近い将来にまた起きる可能性があると指摘する専門家もいる。

 調査結果によると、約360年前と同じM7・6の地震が起きた場合、宮崎市延岡市などの沿岸部で震度6強、三股町や椎葉村など内陸部でも同5強の大きな揺れになる。日向灘沿岸の10市町には最大6メートルの津波が来襲し、浸水面積は最大で3070ヘクタールとされた。

 津波が来るまでの時間は最も早い門川町で12分。延岡市と日向市が13分、宮崎市と日南市14分など。南海トラフ巨大地震の想定と比べると、4分遅い串間市、同じ時間の日南市を除いて8市町で4~3分早い。

 住宅の全壊・全焼は、多くの家で暖房や夕食準備で火を使い出火件数が最も多くなるとされる冬の午後6時ごろの発生で1万6千棟。人的被害は、多くの人が寝ており家屋倒壊による被害の危険が高く、津波避難も遅れるとされる冬の深夜で、死者1700人、負傷者6500人に達する可能性があるという。

 県によると、2006年にも日向灘地震の被害想定を作成したが、内陸型地震のデータをもとに導き出したもので、津波の到達時間や浸水面積の予測もなかった。その後に起きた東日本大震災を機に「海溝型地震」の研究が進み、今回はその最新の知見をもとにシミュレートしたという。06年の想定では2万7800棟だった住宅の全壊・全焼は1万1800棟減ったが、死者は1550人から150人増えた。最大津波高も6メートルに1メートル高くなった。

 県内の住宅耐震化は2019年度時点で8割まで進んでおり、この耐震化率のもとで、地震直後に55%の住民が早期避難したとの想定で今回、算出。耐震化率が9割、早期避難者が7割に増えると、全壊や全焼は7千棟、死者も360人にまで減らせるとした。

 県危機管理課は「耐震化の推進や早期避難の徹底でまだまだ被害が抑えられる」と呼びかける。県は2021年度中に県地震減災計画を改定する予定で、今回の想定を踏まえ見直しを進める。(矢鳴秀樹)

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