「思ってもみなかった」女性監督の誕生 SNSが支持

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シネマニア経済リポート:DXで挑むハリウッド(下)

 数々の米スタジオの製作現場として「ハリウッド・ノース」と呼ばれるカナダ西部バンクーバー。2010年に東京から移り住み、映画学校を経て俳優活動を続けていた吉田真由美さん(34)は16年夏、フェイスブックの通知に気づき、パソコンを開いた。

ハリウッドでは、女性の日系アメリカ人がスター俳優を主役に据えた映画を監督する動きも。藤えりか記者がポッドキャストで解説します。

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 「誰か応募するといいですよ……! 今月しつこく言い続けるつもり」という書き込みとともに自分を含めた女性21人がタグづけされていた。投稿者はカレン・ラムさん。吉田さんが初出演した長編映画「Evangeline」(13年)の監督・脚本を手がけたアジア系カナダ人女性だ。

 返事をすると、「監督に手を挙げてみない?」とラムさん。カナダの通信大手テラスが、女性監督だけを対象に短編映画コンテストの募集を始めたとのことだった。

 吉田さんは、米アマゾンプライムビデオでの配信が前年に始まった人気ドラマシリーズ「高い城の男」で日本の皇太子妃を演じた。役の幅を広げつつあったが、監督は考えてもみなかった。「監督が女性という現場経験が少なかったので、自分がいずれ監督になる感覚が全くなかったんです」

 ラムさんに初めて会った当時も内心驚いていた。企業の女性役員の少なさと軌を一にするように、現場トップの女性監督は世界的に少ない。アジア系はなおさらだ。

 でも考えてみれば、中高時代の演劇部でも、演技以上に演出が好きだった。ちょうど祖母の思い出を軸に初めて、舞台の戯曲を書いたばかり。書ききれなかったことを中心に、「あかし」と題して企画書を書いてみた。アイデアを説明する「ピッチ」用の英語字幕入りの1分動画も提出。審査員だけでなく、ネットの一般投票も勝ち抜かねばならず、フェイスブックやツイッターインスタグラムなどSNSで、撮影の様子などもアップして日々宣伝し、地元メディアにネット広告も出した。すると地元から応援の声が相次ぐ。「見てもらうためにネットでどんな風に宣伝・マーケティングをして地元の人たちとつながれるか、勉強になった」と振り返る。

 結果、200以上の応募作の…

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