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有料記事患者を生きる

松浦祐子
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 医師のエマ・大辻・ピックルスさん(42)は、高校時代からおなかの不調をかかえていたが、原因はわからないままだった。

 33歳で長男を出産した直後には、腸の動きが低下する「イレウス」を起こした。医師に「腸に病気があるはず」と指摘された。

 子育ての生活が始まった。保険会社に対して医学的な見解を示す顧問医の仕事も在宅でこなした。

 出産時の経験を経て、おなかの不調の原因は、精神的なものではなく、腸の病気だとの思いは深まった。思い当たったのは、難病の「慢性偽性腸閉塞(へいそく)症(CIPO)」だった。

 胃や腸などの臓器自体には、食べ物の消化を妨げる閉塞が起こっていないにもかかわらず、動きが悪くなることで腸閉塞のような症状を起こす原因不明の病気だ。

 一般的な検査をしただけでは、診断するのも難しい。

 そこで、CIPOを専門的に治療している医師を探し、受診をした。特殊なMRIで検査を受けた。

 特殊なMRIで腹部を撮影したところ、大きく膨らんだ胃が映し出された。

 「悪いのは腸ではなくて、胃ですね」と、医師に言われた。

 CIPOは、小腸の動きが低下している患者が多い。CIPOではなく、「機能性ディスペプシア(FD)」と診断された。

 FDは、慢性的にみぞおちの痛みや胃もたれなど症状があるのに、内視鏡検査などで調べても、胃がん胃潰瘍(かいよう)などの病気が見つからない場合の病名だ。

 胃が膨らんだ時に、胃の中の空気を抜くために、腹部に胃ろうが作られた。胃に違和感があれば、胃ろうの部分から注射器で空気を抜くように指示された。

 自宅で何度か試してはみたものの、吸い出されるのは嘔吐(おうと)物のような胃の中のもので、空気は抜けなかった。

 早期には効果があるとされる処置だが、時が経ちすぎてしまっていたとみられる。効果が感じられず、結局、治療に行くのをやめてしまった。

 しかし1年ほどして、体も心も限界が訪れた。

 とうとう食べることができな…

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