第1回獄中にいたパパは精子を菓子袋に…そして僕は生まれた

有料記事青春と愛国とロケット弾

エルサレム=高野遼
[PR]

青春と愛国とロケット弾①

 パレスチナイスラエルの対立が始まって70年以上が経つ。一つの土地をめぐり、互いが故郷だと主張して戦争に発展し、いまパレスチナ人たちはイスラエルによる占領下で生きている。

 私が勤務するエルサレムは、両者のちょうど境界線上に位置する。取材を重ねるうち、私は子どもや若者たちの生き様を追うようになった。

 自力ではあらがえない紛争のど真ん中で生まれ、何を感じて大人になっていくのか――。

 パレスチナの未来を担う彼ら、彼女らの現実に迫ってみたい。

 その一家に出会ったのは、2年前のことだった。

 6歳のアメール君にはお父さんがいない。イスラエル軍に逮捕され、13年前から刑務所に入っているからだという。

 パレスチナでは、よく聞く話だ。イスラエルとの闘争に加わるなどして、刑務所や拘置所に収容されているパレスチナ人は4千人を超える――。

 「ん? ちょっと待って」。ひと呼吸置いて、私は思わず聞き返した。アメール君はまだ6歳。お父さんは13年前から塀の中……。

 いったい君は、どうやって生まれたの?

 そこから聞かされたストーリーは、想像を超える内容だった。

イスラエル人を負傷させ禁錮15年

 父ラファトさん(40)は2006年、軍事部隊の一員としてイスラエル人を負傷させ、有罪判決を受けた。言い渡された刑期は禁錮15年。釈放されるころには、夫婦ともに40歳前後になる計算だった。

 子どもを作るのは、もう難しいかもしれない。そこで面会に訪れた家族は、作戦を立てた。「精子をこっそり持ち出そう」

 もちろん、そんなことはイス…

この記事は有料記事です。残り2207文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら