30年続けた訓練、生きた3.11 障害者ら全員避難
10年前の3月11日午後、津波が迫る海岸近くから、介護が必要な高齢者や障害者約180人の入所者全員を、約5キロ離れた学校まで1時間程度で避難させた福祉施設があった。開設以来30年間続けていた訓練の成果だった。
千葉県山武市木戸の社会福祉法人「緑海(みどりみ)会」(若林良光理事長)が運営する特別養護老人ホームと障害者支援施設。九十九里浜に注ぐ木戸川の堤防わきで、海から約700メートル離れた低地にある。当時はそれぞれ約90人が入所していた。
若林理事長によると、激しい揺れの後、入所者の安否確認中に津波警報が出たのを知り、すぐに避難を始めた。車いすやベッドのままの人も多かったが、職員が手分けをしてマイクロバスやトラックなど施設の車と職員の自家用車合わせて60台に分乗し、市立成東東中学校に向かった。
最後の車が施設近くの橋を渡る時には、津波が川をさかのぼり、真っ黒な濁流が堤防に当たって水柱を上げながら、橋桁の高さまで迫っていた。全員が到着したのは午後4時すぎ。地震発生から約1時間15分後だった。
「年に1回は津波対策として、海からいかに短時間で逃げられるかに集中した訓練をやっていたから、わりとスムーズにできた」と若林理事長は話す。
施設は1981年の開設当初から、火災訓練のほかに、津波も想定した水害の避難訓練を毎年実施してきた。1703年の元禄地震の津波で一帯に多数の犠牲者が出たことを伝える記録や供養碑が、いくつも残っているのを教訓にした。
居室から車いすやベッドを使っての移動、効率的な乗車方法などを確認しながら、実際に車で施設外に出るまでを訓練していた。1987年の県東方沖地震では、途中までだったが、実際に避難を経験した。
避難所で困難多く
ただ、避難所では困難が多か…