「ホッケーの町」五輪合宿断念、落胆の声

長田豊 浪間新太
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 国が示す新型コロナウイルス感染防止策に沿った受け入れ態勢を整えることが極めて困難――。東京五輪のホッケー・インド代表の事前キャンプ誘致を目指してきた島根県奥出雲町の勝田(かった)康則町長が2日、誘致の断念を表明した。キャンプを心待ちにしていた町内のホッケー関係者からは落胆の声が聞かれた。

 勝田町長が、この日開会した町議会で、国が示した感染防止策への対応などが負担となって誘致を断念すると表明した。

 町が特に負担と感じたのが、選手の移動を専用車両とすることや宿泊施設を貸し切りとすることなどで生じる費用や人手の増加だ。

 内閣官房東京五輪・パラリンピック推進本部事務局から昨年11月に届いた感染防止の「マニュアル作成の手引き」によると、選手らの移動は「原則専用車両」、宿泊も「貸し切り・動線分離、共用施設の利用抑制」を求め、練習会場も「貸し切りを原則」とされ、受け入れ自治体の住民と選手らの交流も接触がない公開練習見学やオンライン活用に限定された。

 休会中に報道陣の取材に応じた勝田町長は、この「手引き」が誘致断念を決めた最大の理由と説明。「年明けごろに『ちょっと無理なんじゃないか』と断念を決めた」と述べた。インド側には先月末、断念の方針を伝えたといい、今後、正式に町長の表明内容などを説明する。

 同町はホッケー強豪の横田高校ホッケー部を擁し、日本代表を送り出している「ホッケーの町」。勝田町長は「インドはホッケー強豪国で町の子どもたちに夢と希望を与えたいと誘致を目指しただけに、苦渋の決断」と話した。2017年に登録されたインドのホストタウンは返上せず、今後もホッケーを通じたインドとの文化交流の道を探ることにしている。

 町内のホッケー関係者からは誘致断念を残念がる声が上がった。

 横田高校女子ホッケー部の恩田賢二監督(38)は「事前合宿は、選手たちが海外の代表チームのレベルの高いホッケーを間近で見て、肌で感じる一生に一度の貴重な機会になると期待していた。少しでも代表チームと一緒にプレーしたり、交流して話をしたりすることで、選手たちの価値観やプレーの幅を広げる機会になったはず。事前合宿誘致の断念は率直に残念です」と語る。

 横田中学校で部活動指導員としてホッケー部を指導している、県ホッケー協会の児島史朗副理事長(61)も「新型コロナの影響ということで、仕方がないことではあるが、非常に残念です。事前合宿で町の子どもたちが世界レベルのプレーを体感すれば、次世代のホッケー選手の育成という意味でも非常に大きな意味があったと思う。事前合宿を契機に、インドと奥出雲町の子どもたちがホッケーを通じて交流を深める機会もつくれたかもしれない」と語る。「だが、これで終わりではない。合宿誘致は断念しても、新型コロナが終息したあとで改めて、インドと奥出雲町がホッケーを通じて交流を深められるように、町にはぜひ働きかけてほしい」(長田豊、浪間新太)

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