核ごみ調査継続ありき? 寿都町が5年後の住民投票提案

伊沢健司
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 国の「核のごみ原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分場をめぐり、全国で初めて選定プロセス第1段階の「文献調査」が始まった北海道寿都町の片岡春雄町長は2日、最終となる第3段階の「精密調査」に進む前に賛否を問う住民投票を実施する条例案を町議会に提案した。

 条例案は、昨年11月に始まった2年間の文献調査への賛否が町内で割れるなか、さらに4年間に及ぶ第2段階の「概要調査」に進むことを前提にしている。可決されても住民投票の実施は早くても5年後になるとみられ、反対派は批判している。

 最終処分場の選定プロセスをめぐっては、文献調査に反対する町民団体が昨年10月、調査への応募の賛否を問う住民投票を実施するため、法律上必要な数の署名を集めた。これを受け、住民投票条例案が翌11月に町議会で審議されたが、「町民の賛否は肌感覚でわかる」との片岡町長の主張を町議の半数以上が追認し、条例案は否決された。

 2日に始まった町議会定例会では、片岡町長が一転して住民投票の必要性を訴えた。片岡町長はかねて、論文や資料を調べる文献調査だけでなく、実際に穴を掘る概要調査まで実施して、町内の地質を調べたいとしてきた。文献調査では2年間で最大20億円、概要調査では4年間で最大70億円の交付金が町に入る。片岡町長は、交付金を町の事業に生かしたいとしている。

 片岡町長はこの日の町議会で、「文献から概要までの約6年の調査期間、みなさまと一緒に学んでいく必要がある」と述べた。そのうえで、「町民の不安を和らげていくことが将来適切な判断をするうえで重要だ。声をしっかり聞き、その意思を尊重するために住民投票を行うべきだと判断した」と説明した。

 最終段階の精密調査は14年間で、実際に地下施設をつくる。今回の条例案は、その賛否を問う住民投票の実施を定める。町内の有権者が投票でき、投票率が過半数に満たなければ開票しない。町長については、「結果を尊重しなければならない」と明記された。新設された町議会特別委員会で3日、町議全9人によって審議される。

 ただ、片岡町長はこの秋の町長選に6選をめざして立候補し、文献調査への応募の信を問う考えも示している。調査に反対する幸坂順子町議は報道陣に「条例案には反対だ。秋に町長選があり、もし新しい町長になれば文献調査の取り下げも考えられる。いま条例案を出すのは何の意味があるのか」と批判した。

 核のごみについては、「受け入れがたい」とする道条例が2000年に制定されており、鈴木直道知事は概要調査の前に国に意見を聴かれれば反対する姿勢を示している。知事が反対すれば次の段階に進めないことになっている。(伊沢健司)

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