被災地の首長「将来に不安感じる」8割 42市町村調査

井上充昌
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 東日本大震災で特に被害の大きかった岩手、宮城、福島の42市町村長にアンケートしたところ、7割がこの10年で「創造的復興」ができたと考えている一方で、8割が将来に不安を感じていることがわかった。不安の理由はハード・ソフトの両面にわたる。相反するような回答から、震災復興の難しさが浮かぶ。

 政府は2011年4月、復興にあたって「単なる復旧ではなく、未来に向けた創造的復興を目指していく」と閣議決定。人口減や産業空洞化など、地方の課題解決をめざす先進地として被災地を位置づけた。

 アンケートでは、創造的復興が「できた」「おおむねできた」と答えた首長は74%。「あまりできていない」「できていない」は19%だった。

 具体的な事業で最も「できた」「おおむねできた」が多かったのは「宅地や道路など町のハード面の基盤整備」の90%。「あまりできていない」「できていない」が最も多かったのは「イノベーションを伴うなど新産業、研究機関の進出」の62%だった。

 創造的復興を果たすことで地域を再生させる、というのが政府の復興構想会議の考えだった。

「少子高齢化いっそう」「インフラ重荷に」

 しかし、アンケートではまちの将来に不安を感じるか、との問いに首長の86%が「感じる」「やや感じる」と答えた。「あまり感じない」「感じない」と答えたのは、仙台市、山元町(宮城県)、飯舘村(福島県)の3首長だけだった。

 特に不安を感じる点を複数回答で選んでもらうと、「少子高齢化がいっそう進む」(86%)、「インフラの維持管理が重荷になりそう」(50%)、「人口の転出に歯止めがかからない」(31%)が上位だった。

 自由回答では「創造的復興の理解やコンセンサスが十分に行政・町民等で形成されなかった」(岩手県大槌町)。「少子化、高齢化、人口減少、産業の衰退をどのように創造的復興で覆していくかの答えは出せていないのが反省点である」(宮城県利府町)などとあった。

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 アンケートは、3県の沿岸部や原発事故で避難指示が出た計42市町村長に昨年末、質問用紙を配布。今年2月までにすべてから回答を得た。

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東日本大震災

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