「市街地広げるとしっぺ返し」山元町長インタビュー

聞き手・申知仁

 【宮城】山元町の斎藤俊夫町長(71)が24日、報道各社の共同インタビューに応じた。東日本大震災で600人以上が犠牲となった同町は人口減が止まらず、2017年に過疎地域に指定された。13日の地震では最大震度6弱を観測し、今後の災害への備えも急務だ。町の課題を聞いた。

 ――震災からの復興の現状はどうですか。

 避難道路の整備や被災者の心のケアなど、今後に積み残した部分はあるが、常磐線の内陸移転や新市街地の整備などはおおむね順調に進めることができた。進捗(しんちょく)率でいうと、95%。

 ――震災後、駅前など町内3カ所に人口を集中させる「コンパクトシティー構想」を進めてきました。

 町の人口減は震災前からの課題で、避けられない。住民の利便性を確保する手段として、今でも最善だったと思っている。

 ただ、極端な高齢化が進んでいるのは事実。移住・定住者への支援を進めながら、交流人口を増やして「にぎやかな過疎」を目指す。農水産物直売所「やまもと夢いちごの郷」があるが、さらにスポーツ・レクリエーションの複合施設を計画している。

 ――13日夜の地震では町内約2900戸が一時断水するなどの被害が出ました。10年前の教訓は生かせましたか。

 震災を経験した職員は一定程度、役場に残っている。そのため地震発生後、すぐに被災状況の調査などの初期対応や、罹災(りさい)証明書の発行ができた。

 10年前は道路が遮断されて物流がまひし、町をあげて物資を確保する必要があったが、今回はそうではない。今後は被災者への公的支援が必要な部分と、自助・共助で対応できる部分とを見極めていく。

 ――災害が頻発する今、どうやって町の安全を確保しますか。

 基本的には過去の被災状況に応じて排水路などを整備していくが、現実が時としてそれを上回ることもあり、難しい。

 市街地を広げれば、それだけ多くのインフラを整備しないと安全を確保できなくなる。その意味でも、居住できる区域をしっかりと決めておく町づくりをしないと、後からしっぺ返しを食うことになる。(聞き手・申知仁)…

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