エクモ「すごい機械のゆえに…」 記者が見た現場の苦悩

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小林太一 川田惇史
【動画】コロナ医療「最後のとりで」ECMO病棟の最前線=小林太一、川田惇史撮影
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 新型コロナウイルス患者の命を守る「最後の砦(とりで)」とされるECMO(エクモ)(体外式膜型人工肺)。エクモによる治療で全国有数の実績がある、福岡大学病院(福岡市城南区)ECMOセンターを取材した記者2人が、今回の取材を振り返った。

医師の心に負担、いち早く法整備を(小林太一記者)

 新型コロナの重症患者を救う「最後の砦」と報道されてきたエクモ。医療体制の逼迫(ひっぱく)が続く中、エクモ治療の実態を十分、伝えられてきただろうか。そうした疑問からエクモネットに取材を申し込み、現場として福岡大学病院ECMOセンターを紹介された。

 エクモ治療では、ウイルスに侵された肺の代わりを装置が担い、機能回復を図る。「治すというより、(生命を)維持する。患者自身で回復しなければいけないんです」と、ECMOセンターの星野耕大・副センター長は教えてくれた。

 実際に見た装置は、血液が流れる管とポンプ、酸素と二酸化炭素を交換する膜を内蔵した人工肺、そして各種モニターを備え、意外なほどシンプルな構造だった。

 だが、「生命維持装置」としての能力は医師らも驚くほど高く、肺の機能が回復しないと分かった患者も、機械を動かし続けることで、生かし続けられるのだという。

 治療を継続するのか、それとも中止するのか――。現状では明確なルールがなく、その判断は現場任せになっており、それが医師らの心理的な負担になっている。そのことを取材で知り、広く伝えたいと思った。

 医療技術の進歩から生まれたエクモが突きつける重い課題。再び感染者が急増して、エクモが足りないほど重症者が増えたとき、回復の見込みのない患者の治療を中止し、回復の可能性の高い患者にエクモを付け替える判断を迫られるような事態が起きるかもしれない。「第3波」がこのまま収束したとしても、やがて来るかもしれない「第4波」への備えとして、専門家が言うようにいち早い法整備が必要だろう。(小林太一)

もし家族が直面したら(川田惇史記者)

 「エクモがすごい機械であるが故に死ねない。恐ろしい機械でもあるんです」。取材中、そんな医師の言葉がずんと胸に迫った。

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 エクモに対しては、コロナ重…

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