岩手県宮古市の櫛桁一則さん(48)はあれからずっと被災者に映画を届けている。避難所で、仮設で、災害公営住宅で。この10年で900回を超えた。その活動から見えたことは。
震災後、避難所や仮設住宅で移動上映会を始め、この10年で通算900回を超えました。
最近は災害公営住宅での開催が多いですね。昼間、見に来てくれるのは、お年寄りがほとんど。映画の全盛期を知る人たちです。
【特集】東日本大震災を語る
。被災地の復興や支援、福島第1原発事故への対応など、様々な分野で思いを寄せる人たちにインタビューしました。
上映後に「お茶っこタイム」をもうけ、昔の地図も引っ張り出して水を向けると、「ここに何とかシアターがあった」「映画の後、隣のラーメン店がおいしかった」と次々に思い出話が出てきます。
定番は「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」シリーズですね。津波前の街の様子がちらっと出てくると、「あっ」と声が上がる。泣いたり笑ったり、小さな真っ暗な部屋で気持ちが揺さぶられ、みんなで盛り上がる。
映画ってこういうものだったな。そうこちらが教えられるような気がします。
こうした活動は現在、より大…