ワクチン国内接種始まる まず医療従事者4万人が対象

富田洸平
【動画】新型コロナウイルスの国内でのワクチン接種が始まった=代表撮影
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 国内初となる新型コロナウイルスのワクチン接種が17日、医療従事者に対する先行接種から始まった。国立病院機構など全国100カ所の医療機関の計約4万人が受ける予定だ。うち2万人を健康調査の対象とし、この間に副反応などの情報を集め、4月以降、高齢者をはじめ幅広い住民の接種につなげる。

 厚生労働省によると、17日午後5時までに首都圏の8施設で計125人に接種が行われた。接種直後の死亡や「アナフィラキシー」と呼ばれる重いアレルギー反応は報告されていないという。100カ所の医療機関には19日までにワクチンが配送される予定。

 先行接種に使われる米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが開発したワクチンは短期間で特例承認され、国内の治験は約160人分で、副反応のデータなども少ない。このため政府は、先行する2万人の同意を得て健康調査をする。

 ファイザーなどのワクチンは2回の接種が必要だ。それぞれの接種後計7週間、体温や接種部位の様子、全身症状があるかどうかを毎日記録し、厚生労働省の専門家らによる部会を通じて結果を公表する。部会は少なくとも数週間に1回開くという。

 全国で最も早く接種が始まった東京都目黒区の国立病院機構東京医療センターでは17日朝、医師らへの接種のようすが報道機関に公開された。病院の会議室を会場にして、接種前の体調などを記入する「予診票」を確認した後、医師らが順に受けた。接種後は副反応をみるため15分待機する。 同センターには医師や看護師、事務員、清掃などにかかわる委託業者ら計約1800人がいる。3月31日までに先行接種で計800人に接種するという。職員らへのアンケートでは、85%が先行接種やそれに続く優先接種を希望したという。

 新木一弘院長は国内で初めて接種を受けた後、記者会見した。同センターで先行接種を受ける全員が健康調査に応じるとし、「国民のみなさんがワクチンを安心して受けていただけるデータとして有効に活用されることを期待している」と話した。

 政府が医療従事者を最優先したのは、新型コロナの患者に頻繁に接し、感染リスクが高いため。ワクチンで感染リスクを抑えることで、入院患者らの感染防止や医療の提供体制の確保につなげる狙いがある。新木院長は「医療を確実に届けるには、院内での感染防止に万全を期す必要がある。コロナ対策として院長が率先して受ける必要があると考えた」と話した。

 先行接種に続く医療従事者約370万人の優先接種は3月中に始まる予定だが、先行接種に十分な量が確保されていれば、医療機関の判断で前倒しもできる。

 日本医師会の中川俊男会長は17日の記者会見で「(ワクチンの接種は)メリットがデメリットをうわまわるのがあきらか。接種体制の構築に万全の体制でのぞんでいる」と話した。

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