商社マンが挑む海洋プラごみの資源化 対馬の海で考えた

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橋田正城
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 海岸に漂着したプラスチックごみ再資源化事業が本格化します。文具、花びん、買い物かご……。今年から海洋プラごみに由来する日用品が幾つも実用化され、シャンプーボトルも大手メーカーが検討中です。将来は製品ベースで数百トン程度に拡充される方針で、世界でも例をみない規模になります。事業に挑むのは、伊藤忠商事の小林拓矢さん(37)。「野武士集団」と呼ばれる会社の中でも営業成績が優れ、社長賞をとったことのある商社マンです。海洋ごみの事業に取り組む狙いを聞きました。

 ――なぜ、海岸に漂着したプラスチックごみに着目したのですか。

 プラスチックの負の側面が問題視されるようになってきました。特に海洋ごみです。海で漂流すると粉々になり、マイクロプラスチックとして拡散します。海に流入するプラスチックごみは推計で年800万トンに達し、生態系に悪影響を及ぼしています。海岸に漂着したプラスチックが引き起こす景観被害も深刻です。

 一方、伊藤忠商事は年341万トンのプラスチックを扱っています。ディストリビューター(卸売業者)として世界2位の数量で、プラスチックの負の問題に向き合う責任があります。実際、長崎県対馬市のように困っている地域があります。そこに寄り添った仕事を打ち出すのは意義のあることだと思いました。

 ――とはいえ、プラスチックの一種であるナイロンを扱う貿易は面白かったのでは。

 「売り」と「買い」の差益でもうけを出すトレード業務にはまりました。トレードがやりたくて商社に入ったわけですし、商売の基礎も学びました。

 でも、素材の仕入れ先と納入先の板挟みになっていることに気づきました。仕入れ先に「安く売って下さい」と頼む一方で、納入先には「高く買って下さい」と頭を下げる。その繰り返しで良いのか、と。価格以外のところで提供できる「価値」があるのではないか、と思うようになったのです。脱プラの機運が高まってきたこともあります。消費者目線に徹し、社会課題の解決につながる新しいビジネスを構築したいと考えました。売り手と買い手、世間にとって望ましい「三方(さんぽう)よし」の商売を実現するために、です。この言葉は近江商人の経営哲学で、当社を創業した初代伊藤忠兵衛の商いに対する信念でした。現代のSDGs(持続可能な開発目標)につながる内容だと思います。

 ――信念があるそうですね。

 意識の高い人が環境の問題点…

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