80歳オモニの豚クッパ 半世紀変わらないスープの滋味

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神谷毅
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 朝6時。厨房(ちゅうぼう)に立ち、毎日、毎日、煮続けてきたスープが残る大鍋に火をつける。肉と骨を切って入れ、いつもの一日が始まる。

 韓国・釜山の郷土料理「テジクッパ(豚スープご飯)」。住宅地の中に、半世紀変わらない味と評判の店がある。「新昌クッパ」だ。

 「スープは味見しなくても、見ただけでおいしいかどうか分かるんだよ」。店を切り盛りする徐恵子(ソヘジャ)さんの声はよく通る。ピンと伸びた背筋、ハリのある肌の80歳。「医者は健康年齢60歳だって。仕事が運動だからね」

 朝鮮半島が日本の植民地支配下にあったころに日本で生まれ、5歳まで暮らした。当時のことは覚えていない。「解放」後に釜山へ戻ると、両親は病で世を去った。4人の兄弟と親戚の家を転々とした。結婚し、「国際市場」という大きな市場で靴や服を売ったが、立て続けに失敗。1960年代のことだ。

 テジクッパは、食べ応えのある肉、滋味深いスープ、腹持ちのするご飯をおいしく短時間で食べられ、労働者に好まれた。市場に客足の絶えない店があった。「作り方を教えてよ」。尋ねてみたが、相手にされずに断られた。「なら自分でやってやろうじゃない」。厨房もない10人ほどの席から店を始めた。

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