交通事故死、人口比ワーストの香川県 県警の対策は

長妻昭明
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 香川県内の昨年1年間の交通事故による死者は59人(前年比12人増)で、人口10万人あたりの6・17人は8年ぶりの全国ワーストとなった。過去10年でも、全国ワースト10位以内の常連だ=グラフ。県警は取り締まりを強化し、事故の多い地点に対策を講じてきたが、十分な成果は上がっていない。

 昨年7月3日夜、丸亀市の市道で89歳の女性が乗用車にはねられ、死亡した。丸亀署によると、現場は片側2車線の見通しの良い直線道路で、女性はスーパーで買い物を終えた後、横断歩道がない場所を渡ろうとしたとみられる。

 歩行者が車にはねられる事故の多くは、横断歩道以外の場所で起きている。特に県内は片側2、3車線の道路が多く、交通量も比較的少ないため、車は速度を上げがちだ。高齢者などは車が接近するまでに渡りきれると判断しても、間に合わないケースもある。

 県警は2019年9月、歩道の路面に「あと○○メートル」と、信号機がある横断歩道までの距離の表示を県内5カ所で始めた。信号や横断歩道に誘導する「おもてなシート」と名づけた全国初の試みだ。県警の調査では、設置によって信号機がある横断歩道を渡る人が3割増えたという。今月までに56カ所に設置場所を増やした。

 また、県は交差点での出合い頭の事故が多いことを受け、死傷事故が起きた434カ所の交差点を青色や赤色で舗装した。ドライバーが交差点に気付きやすくなり、手前で速度を落とし、急な右折や車線変更の抑止につながる効果があったという。カラー舗装前と施工後を比較すると、出合い頭の事故は7割近く減ったという。

 これらの成果もあって、交通事故発生件数は年々減少し、19年は4537件で16年に比べると約2千件減った。ただ、他の都道府県も減らしており、人口10万人あたりの全国順位は、19年がワースト6位で、16年もワースト5位と、代わり映えがしない。

 また、事故は減っても死者は増加傾向だ。18年44人、19年47人、20年59人。人口10万人あたりの交通事故死亡者数も昨年は6・17人で全国ワーストとなり、2、3位の福井(5・34人)、高知(4・87人)に大きく差を付けた。

 死亡事故が多い要因について、県警は道路舗装率の高さや道幅の広さなど、整備された道路環境を挙げるが、統計データからは県民の交通事故対策への意識の低さが浮かび上がる。

 車の事故で死亡した人のうち、同乗者を含めシートベルトが非着用だった人の割合は19年は7割近く、全国平均を大幅に上回った。車の横断歩道での一時非停止率は昨年約9割に上った。飲酒運転で人身事故を起こした件数も19年に人口あたりで全国ワースト5位、死者数は全国ワースト1位だった。

 また、日本自動車連盟(JAF)が16年に実施した交通マナーに関するアンケートでは、自分が住む都道府県の交通マナーが悪いと考える人の割合が全国で最も多く、全国平均の倍以上の80%に上った。

 県警の佐藤隆治交通部長は「取り締まりの強化や交通安全教室を行っていくが、事故を減らすには県民の協力が必要。一人ひとりが県内の死亡事故の多さを重く受け止め、交通ルールを守った運転や歩行に徹してほしい」と話す。(長妻昭明)

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