宇佐見さん「若さに振り回されず」 卒論は推し作家
第164回芥川賞が20日発表され、宇佐見りんさん(21)の「推し、燃ゆ」に決まった。同賞史上3番目に若い受賞者となった。記者会見での一問一答は次の通り。
――受賞の感想を。
まだ受賞の知らせをいただいてからそんなに時間が経ってなくて、胸いっぱいです。まだ頭が追いついていない感じです。とてもうれしいです。
――受賞作で主人公は、「推し」を推すことが自分の人生の「背骨」だと表現している。ご自身の背骨について「小説を書くこと」だと以前おっしゃっていた。今後どのように小説と向き合っていきたいか。
私にとって小説が背骨であるというのは、決して大げさではなくて、これがあるからやっていけるんだという感覚はずっとあった。これからもその感覚は変わらないんじゃないかと思います。全力で書いていきたいです。
卒論は「推し作家」について調べて書きたい
――現在大学2年生。今後どんなことを吸収して、作家になっていきたいか。
国文学専攻なのですが、いろいろなことに興味があります。宗教学、日本の古典、語りについてなど、調べたいことがある。すごく好きな作家が中上健次。一番尊敬していて、卒論はまだ決まっていませんが、彼について調べて書いていきたいと思います。
――中上は、宇佐見さんの「推し」ということですね。今後書きたいテーマは。
中上でいえば「路地」がテーマになっていて、私の中では、いまのところは家族が大きなテーマになっていると思います。ただ、まだ新人なので、これから広がっていくかも知れません。
――今回、島田雅彦選考委員が、「一見、刹那(せつな)的に繰り出していくように見える言葉が非常によく吟味されている」と評価されたと話している。どう言葉を選んでいるのか。
選考委員の先生方の言葉は今初めて聞くので、とてもうれしいと感じました。私はけっこう時間をかけて書いていくタイプ。文章そのものに対して最適解、これだという言葉を探していくのは苦しいのですが、当てはまったときはうれしい。「吟味している」と自分で言うのは恥ずかしいが、そう言ってもらえるのはすごくうれしいです。
「ありがたい賞と受け止め、若さに振り回されずに」
――芥川賞受賞は史上3番目での若さ。若い女性の活躍、あるいは3番目の若さでの受賞をどのように感じているか。
自分としても、まさか21で、自分の予定よりも早く……あ、そんな言い方になっちゃいました。とても信じられない気持ちなんですけど、まだ至らない部分は、若さゆえなのか、自分の力が至らないからかはわからないけれど、すごく感じています。先ほど中上健次を推し作家と言いましたが、彼はほんとうにすごくて、3回人生を繰り返しても追いつかないんじゃないか、というくらいすごい文章を書かれる方です。
賞はありがたく受け止めつつ、若さやそういったものに振り回されずに、ただひたすら自分の目指すものを書き続けることが、結局賞を受けることの恩返しになるんじゃないかと思いますね。
――中上さんは「路地」、地域社会という自身の基盤があって言葉を紡いだ作家。宇佐見さんの基盤となるものはどこにあると考えているか。また中上にひかれるのはテーマなのか、言葉なのか。
良い文章には、読んだだけで…